第15話 和尚、昇天?セクシーランジェリーハプニング

通販で届いたセクシーランジェリーを手に、クレオパトラ8世はうっとりした表情を浮かべた。


「ふふん、このスカラベの刺繍と金糸の編み込み……4000年の歴史を感じるわ」


その夜、和尚の部屋からは艶やかなる喘ぎが漏れ続けた。


翌朝。


クレオパトラは、ぼんやりと立ち上がると――


「私は満たされた……身も心も……」


ふわり、と浮かび上がり、光を纏いながら上空へと昇天していった。


「フクレオパトラさんっ!?なんで!?なんで成仏!?え、昨日の夜の満足度そんなに高かったの!?」


れんが絶叫する間もなく、さらに奥から――和尚の部屋が薄らと光を帯び始める。


蓮が駆けつけると、和尚は既に頭蓋骨のみの姿で薄れかけていた。


「ま……まさか和尚まで……?」


「お供え物は……般若湯はんにゃとうと、煮干しを……頼む……」


そう言い残して、和尚もフェードアウト。


途方に暮れる蓮。


そのとき、ラスプーチンが現れる。


「成仏してしまったか。ならば遺言通り墓前に供えるのだ。本人の望んだものを。」


茫然となった蓮は、ラスプーチンの言うままに、煩悩寺の裏手にある「白骨之墓」の前に般若湯と煮干しを供えた。


すると供えた般若湯の中身がどんどん減っていくではないか、煮干しも袋ごと墓石へと吸い込まれるように消えていく


蓮「えええええ???」


しばらくすると――


ボコン!!


墓の前の地面が隆起し土の中から泥だらけの和尚が這い出てきた。


「ぶほぁ! うむ、ようやく戻ってこれたわ……。あの世で本物の地蔵菩薩に叱られてのう……」


蓮「成仏してたのかよ!!」


和尚「ちと早まったのう」




それから三日後。


裏山でキノコ狩りをしていた町民が煩悩寺浦山の大木に引っかかった包帯ミイラを発見した。


「なんか引っかかってる…人形……?気持ち悪い…」


通報を受けて駆けつけた烏天狗巡査長が、確認して一言。


「ファラオ女王クレオパトラ8世、三日三晩ミイラ状態で木に引っかかっていた模様。生きてはいる……!」


こうして煩悩寺の住人たちはまた一人、死地(?)から生還したのであった――。



裏山の大木から無事(?)に救出されたクレオパトラ8世は、寺の縁側でぐったりと横たわっていた。


「うう……三日三晩、ひどい目にあったわ……」


「まさに死んでたからなー 、ほぼミイラだったし」と蓮。


だが、クレオパトラはおもむろに立ち上がり、天を見上げる。


「……行ける、気がする」


「え? 何が?」


その瞬間、彼女の足元に黄金のオーラが広がり――


「ファラオ・アセンションッ!!」


バサッと両腕を広げると、背後に羽根のような魔力の翼が展開。


フワリと浮かび上がるクレオパトラ。


「ほ、飛んでる!? 羽ばたいてる!?」


蓮が叫ぶ中、クレオパトラは優雅に一回転空中で舞った。


「どうやらあの“昇天”で、私は空中移動のスキルを得たようね! 地上の墓所から天空の王国への進化……これぞ神の祝福!」


和尚も腕組みしてうなる。

「うむ。魂が半分あの世に行って戻ってきた者には、まれにこういう“後遺症”が出るのじゃ」


「後遺症っていうか、バグみたいなもんでしょ!?」蓮は頭を抱えた。



なお、飛行能力には副作用があった。


ファラオは緊張や高揚、あるいは惚気話を語っている最中に勝手に中に浮くという体質になってしまったのだ。


蓮と一緒にスーパーのレジに並んでいるとき――

和尚とのラブロマンスを話していたクレオパトラが、ふわりと浮上し、天井の照明に頭をぶつける。


レジ係「あの……お客様、浮いてますけど」


蓮「……体質です」



https://kakuyomu.jp/users/xaren/news/16818792435605443062

6/29の近況ノートにて登場人物紹介とwhisk作成のメインキャラのイラストをアップしています。


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