第14話 暗殺者

「で、次はどこに向かったらいいんだろう?」


僕はつぶやく。


「北にあるサイガの村に行きますわ」

「サイガの村? どうして?」

「このスタディアの図書館で、モンスターが隠しtいた書物がありましたの」

「見つけたのは私ですじゃ」

すると、ライオが口を挟んだ。

「てめぇは黙ってろ」

リッカが言う。


「それで?」

「この本には、予言が書かれていますの」

「予言?」

「ええ。私たちのこれまでについて、正確に書かれていますわ。

それに、ここで私たちとヒロトたちが合流することも書かれていましたの。

だから待っていたのですわ。

そして、次の予言は、


<スタディアの町にたどり着いた精者たちは、サイガの村を目指した。そして新たに3人の精者と出会った>


ですわ」


「一気に3人!?」

「ええ、効率的ですことよ」

「他には?」



<その後、タタルの町で、精者たちは私と出会う。その先は、今の私では見えない。おそらく私だけでは力が足りないのだ。ならば、私はタタルの町で精者たちを待とう>


ですわ」


「なるほど…。でも、アンガスを放っておくわけにもいかない。僕たちがスタディアの町を目指していることは知っているから、ここで待っていれば合流できるはずだ」

「いいえ、それは無理ですわ」

「無理? なぜ?」

「アンガスさんというのは、青い髪でしょう?」

「え? なぜ知っているの?」

「予言の書に、こう書かれていますの。


<森で別れた青き髪の卑猥な精者は、怯えて西の大陸へ渡った。いつ精者たちと合流できるのかも、今の私には見えない>


ですわ」


どこまで逃げてるんだ…。

あと、卑猥なのがバレてる…。


「わかった。それじゃあ、サイガの村に行こう」


こうして、僕、ジャンヌ、リッカ、ヤオ、ナルマ、フレカ、フレカ、ミリアの8人は、北のサイガの村に向かうことにした。


<戦闘メンバーを4人選んでください>


僕、ジャンヌ、ミリア、ライオの4人を戦闘メンバーとすることになった。

ジャンヌは

「最近、私の出番がありませんことよ」

とのことだった。

ライオは

「この狭い馬車の中で美少女たちと。むふふー」

とか言っていたためだ。

ナルマは舟で乗り物酔いを克服したらしかった。


僕たちは、サイガの村に向かう途中にある廃村に入る。

すると。


パン!


何かが爆ぜるような音。


ヒュンッ


僕の頬を、何かがかすめた。

血が流れる。


「な、なんですの!?」


すると、廃村のどこかから声がした。


「私は魔王軍から暗殺依頼を受けている。お前たちはすでに私の射程範囲にある」


「敵襲…なの…」

「ど、どこからですじゃ!?」


僕は答える。


「傷からすると、あっちの方向からだけど…」

「とにかく、いったん隠れますわよ」


僕たちは、廃村の建物に身を隠す。

ルール上、馬車には攻撃できないはずだ。


「さて、どうやって敵を探しますじゃ」

「私…自然の声…聞けば…敵の場所…わかる…でも…探す時間…必要…」


ミリアはそういうと、地面に手をついた。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/hm-ciao/news/16818792436158496834


「なるほど。それでいきましてよ」


パンッ!


僕たちが隠れている建物が攻撃をされる。

壁に穴があく。

これは、銃撃だ。


パンッ! パンッ!


「まずい。このままじゃいつか当たってしまう。敵を引きつけないと」

すると、ライオが言う。

「私がやりますじゃ」

「え!?」

「時空魔法、空間歪曲のディスト。1分程度なら、銃弾の射線を曲げ、そらすことができますじゃ」

「な、なるほど…わかった。頼みます」

「うむ。ディスト!」


そう叫ぶと、ライオの周囲が歪んで見える。

「行きますじゃ!」

しかし、ライオが建物を出た瞬間。


「がふっ!」


銃弾がライオを直撃した。


「ば、バカな…ですじゃ…」

「ライオ!」

「全く! 役立たずですわ!」


ジャンヌはライオを建物に引きずりこむ。


パンッ!


また銃弾が飛んでくる。

建物に穴があく。


「ど、どういうことですじゃ…当たるはずは…ないのに…」

「静かにして! ヒール!」

僕は回復魔法をライオにかける。

「くそ、馬車からの距離が遠すぎる! これじゃメンバーの交代もできない」

「い、いったい…」

「ひょっとして、物理攻撃ではなく、魔法攻撃ではありませんの?」

「いや…」

そう言うと、ライオは自らの傷をえぐる。

「な? 何を?」

「この通り、、物質の銃弾ですじゃ…」

ライオは傷口から取り出した弾丸を見せながら言った。


パンッ!


「見つけた…あっちの方向…壁の向こう…に隠れながら…撃ってる…」

「でも、敵の攻撃の正体を見極めないと危険だ」

「距離はどれくらいですの?」

「150…メートル…」

「常人だと、直線で25秒くらいか…。でも敵の攻撃をかわしながらじゃ、もっとかかる」

「ヒロト。私にスピーダをかけてくださいまして?」

「え?」

「有効時間の10秒で勝負を決めますわ」

「でも、敵の攻撃の正体を…」


パンッ


「もう余裕はありませんことよ」

「わ、わかった! スピーダ!」

10秒だけ仲間の速度を上げる補助魔法だ。


「行きますわ!」


ジャンヌは建物を飛び出す。

そして、ミリアが示した方向へ一直線に走っていく。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/hm-ciao/news/16818792436158516715


「ばかな! 無謀すぎる! やめるんだジャンヌ!」

「まどろっこしいのは嫌いでしてよ!」


パンッ! パンッ! パンッ!


銃音が3発鳴り響く。

しかし。


「え!?」


ジャンヌには1発も当たらない。


「やぁぁぁ!」 


ジャンヌは壁を飛び越え、斬撃を繰り出す。


「うぁぁぁ!」


敵はライフルの銃身を切り落とされた。

そこにいたのは、長い黒髪の女だった。

前髪に隠れて、顔はよく見えない。

服も軍服のような黒い服に、帽子。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/hm-ciao/news/16818792436158531880


「ふん。私にかかればこんなものですわ」


い、いったいなぜ当たらなかったんだ?

ジャンヌ・ダルク…もしかして、神の加護か?


「くっ!」


女は、コートから2本の拳銃を取り出す。


ガン! ガン!


しかし、それもジャンヌには当たらない。


「なるほど、わかりましたわ、なぜ私にあなたの攻撃が当たらないのか。そして逆に、なぜライオには当たったのか」

「え!? いったいなぜなんだ?」

「不思議…」


僕とミリアはジャンヌの近くに駆け寄り、訊ねる。


「こんな前髪じゃ、まともに狙えるわけありませんもの。ライオに当たったのは、本当は外れていたのに、空間歪曲で偶然当たったんですわ」


なん…だと…。


「そ! そういうことだったのか!」


女は叫ぶと、続ける。


「私は暗殺者の家系で育った。しかし、これまで一度も成功しなかった。私は家族から見放された。そのとき、魔王軍が私に声をかけた。精者を暗殺すれば、なぜ私が暗殺が成功できないのか、その答えを教えてくれるとな」


いや、家族も気づけよ。

それに、魔王軍も先に教えないと暗殺成功しないだろ…。


「ち! やはり役立たずだったな!」


そのとき、魔王軍のモンスターが現れた。

頭の上には<ゴゴラ>と書かれている。

いや、僕はどっちかというとこの暗殺者に同情するのだが。


「まぁいい。お前たちを倒して、魔王さまから世界の半分をいただくとしよう。まずは役立たずからな!」

「くっ!」


暗殺者は2丁の拳銃を構える。


ガン! ガン!


しかし、弾丸はやはり当たらない。


「まったく、お話しになりませんわ」


そう言うと、ジャンヌの剣が暗殺者を斬った。

かと思ったら。


ハラリ…


斬ったのは、暗殺者の前髪だった。


「わわわっ! は、恥ずかしい! 私の顔を見ないで!」

「恥ずかしがらずによく見なさい! ですわ」


「え?」


そう言うと、暗殺者はゴゴラを見る。


「見える…見えるぞ…お前がよく見える! そこだ!」


いや、僕たちには最初から見えているけどね。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/hm-ciao/news/16818792436158548140


ガン! ガン!


「ぐはあ!」


<ゴゴラを倒した!>


暗殺者はジャンヌに向かって言う。


「お姉様!」


お姉様?


「お姉様は私の恩人だ。どうか、一緒に旅をさせてください!」

「かまいませんことよ」

「私はライラです!」


こうして、ライラは僕たちの仲間になった。

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