第1話:さまざまな危機勃発
青山翠雲氏は、今夜もよく眠れない夜を迎えていた。一つには、前回ミッション中に宇宙戦艦ムサシ内で盛由紀との間に授かった乳飲子の間断なく続く鳴き声で眠りが浅いことであり、二つ目の要因としては、5作もストックがあると豪語しておきながら、気分が乗らず、全く筆が進まないことから、ここ最近、ほぼ新作を出せておらず、ファンからのソフト&ハードな「新作はまだか!?」との突き上げに逃げ出したい気分となっていたためである。三つ目の要因としては、昨今の米騒動による米価高騰により、青山家では、麦3割入れることで嵩増しする対策を講じていたが、米以外の物価も高騰しているところに、地球人とガミタス星人との間に生まれた男子が途轍もない食欲と性欲を示しており、それがさらに食糧不作と物価高に拍車をかけており、もはや翠雲氏の少ない給与では、食費を切り詰める以外に手段がなく、ここ1週間は茶碗に軽くよそっただけの麦3割のご飯で糊口を凌ぐ有様となっていたため、空腹を覚えてなかなか入眠出来なかった。人間、空腹ではなかなか創作活動などできず、さらなる悪循環となっていた。さらに追い打ちをかけたのが、前回ミッションで、地球を滅亡の淵から、機転を利かした由紀との「人体間電子および量子移動発射法」を用いて、コスモクリーナー タイプEを地球に向けて発射・撒布し、見事、人口減少、いや、ソフト・ジェノサイドの危機を回避し、世界各地を訪れるパレードを行うなど英雄扱いをされた青山翠雲氏であったが、今や立場は完全に逆転していたことが、精神に大きな翳を作っていたのである。そうここにも、まるでジェットコースターに乗って、急上昇・急降下を味わっている人物がおり、今や世間では青山翠雲氏を悪の元凶とさえ指弾する声が大きくなっていた。
何があったかというと、少し遡って整理すれば、そもそも、青山翠雲氏は、IT企業に勤める傍ら、日曜作家として物書きを愉しんでいたところに、人口減少のあおりから、宇宙探索任務に指名され、AIの力を借りながらなんとか任務をこなしていたものの、ちょっとした冒険心から手動操縦に切り替えたことが仇となり、宇宙で迷子となる。しかし、災い転じて福となし、奇遇なことに地球のミラーリングとも言える惑星“エーアデ”への不時着を通じて、人類初の地球外生命との遭遇を果たし、なんとか地球への帰還、歴史的遭遇のレポートとなった。初の地球外生命体との遭遇を成し遂げただけでも、人類史上に燦然と輝く偉業として、ユーリ・ガガーリン、ニール・アームストロングと並び称されるだけの足跡を残したが、極端な人口減少による人類消滅の危機に瀕した地球は、ひそかに建造を進めていた宇宙戦艦ムサシの航海長として青山翠雲氏を任命し、再生の鍵を握るコスモクリーナー タイプE入手の密命を託し、見事、地球滅亡の危機を回避し、人口減少・民族消滅の危機から人類を救ったのであった。もちろん、たちまち英雄扱いとなり、新聞各紙はもちろん、国内の『AERA』『週刊文春』『ムック』ばかりでなく、『TIME』『LIFE』『Der SPIEGEL』『ELLE』など世界各誌の表紙を飾るまでになっていたのは言うまでもない。
まぁ、ここまでは、さもあらんというところであろう。人類史上2つもの大きな足跡を残したのだから、当たり前である。その後、彼に何があったというのか!?
いかな波動砲をぶっ放したとはいえ、
喉元過ぎれば熱さ忘れる、ということを青山翠雲氏は間もなく痛いほど思い知らされることになった。地球の危機を救った青山翠雲氏であったが、高すぎるコスモクリーナー タイプEの価格1000億コスモオイロの各国負担が議論の俎上に上った。人口減少問題の深刻度合は、先進5ヶ国いずれも等しく、解消度合もこれまた同様であったが、青山翠雲氏の国籍が日本であったこと、最初のガミタス星人の不時着地点が日本の西之島であったこと、C5(実質の地球防衛軍司令本部)のトップも日本人、宇宙戦艦ムサシのトップ起田艦長も日本人であったこと、さらには、地球防衛軍として、当初予算として承認していた金額は100億コスモオイロのみであったことなどから、欧米の外交官たちのハード・ネゴシエーターたちはロジックに次ぐロジックで、あれよあれよという間に、日本が900億コスモオイロの負担、残り先進4ヶ国で残りの100億コスモオイロを負担という線で決着させられてしまっていたのである。こうなると、日本の政府は何をしていたのだ、青山翠雲はきちんと日本政府はおろか国際各国機関に承認行為を行ったのか?など、すぐに敬称は省略され、呼び捨てで指弾・糾弾されるようになっていた。当時の状況を考えれば、相手は超ハードネゴシエーター惑星“エーアデ”の
加えて追い打ちをかけるように、日本政府内でも、あのコスモクリーナー タイプEの日本を含めた地球への発射行為は、非核三原則に反していたのではないか?との批判も加わり、連日、非公開の委員会ながら質問攻めに合い、肉体的にも精神的にも追い詰められていた。ただ、ケツを捲ってしまえば、非核三原則違反だの、青山翠雲氏の独断専行だったと仮に個人に責を負わせたところで、前者は「あぁ、そうですか?じゃ、私にどうしろと?」と開き直ってしまえばそれまでであったし、「900億コスモオイロの借財の責任は青山翠雲氏にあり」と決議したところで、そんな天文学的な数値を一個人で背負えるはずはなく、惑星“エーアデ”も地球に対する売掛金であるため、地球内部のツマらん責任の押し付け合いには一切関知することなく、無情にも支払いが遅れる秒ごとに莫大な利子が嵩んでいくだけであった。
こうして、文字どおり宇宙的巨額債務を背負ってしまった地球は、なんとかしなければならない岐路に立たされていた。
そんな最中、久しぶりに惑星“エーアデ”のスジャータからの光子メッセージを腕時計型ウェアラブルデバイスで受け取る。その後、いかがですか?と。思わず、由紀が近くにいないかを確認してメッセージを読んでみる。すると、その後シリーズ化している人気ドラマ「帰ってきたスペルマン」にて、スジャータも思いの外、痴情対応地上隊員として人気度の好位置をキープしており、これもフレッシュな珈琲フレッシュのおかげだという。元気に活躍しているとのことだ。
スジャータからのメッセージを読んで、あのまま、惑星“エーアデ”に留まっていたら、今のこのような苦しみはなかったのだろうか?と考えたりもした。しかし、あのまま留まっていたら、地球に向けて、コスモクリーナー タイプEは発射されることなく、地球は滅亡していたのかもしれないし、由紀とのこうした家庭も築けていなかったのだと思うと、これで良かったのだと自分を納得させている自分がいた。
スジャータに向けての返事で、こちら地球は、ただでさえの物価高、米不足で困っているところに、ガミタス星人との間に生まれた男子たちの旺盛な食欲と性欲に苛まれている事態が起きていて、それが自分にも飛び火する形で連日追及され、精神的に参っています、とこちらの近況を認め、返信しておいた。
スジャータのことを思い出すと、思わずあそこが痛いほどにひとりでに固くなってしまい、余計に眠れないようになってしまったが、珈琲ミルクポーションパフォーマンスを思い出しているうちに自然と笑みが顔に広がったと思ったら、久々に10日ぶりの猛烈な睡魔が襲ってきて、久々の快眠を得られた。。。
そして、翌朝、久々に股間に感じる濡れ感で飛び起きた。反芻すると、昨日は夢の中で久々に惑星“エーアデ”に向かって飛行し、惑星“エーアデ”に向けて波動砲をぶっぱなしていたような夢を見ていたから、その時に同時に発射してしまったのだろうか???
急いで風呂場へと急行した翠雲氏であったが、今は汁由、いや、知る由もないが、これが60%予知夢であったことを後ほど気づかされることとなる。
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