鳴かぬ蛍が身を焦がす

時間の流れが滞りない傍らで

あの日僕たちは時間の尾ひれを掴んだ


どうしてなんて問いには誰も答えてくれない

昔からそう決まってる

軽薄なものとそうでないもの

ベルトコンベアーに乗せられた記憶が ぽとり、ぽとりと落ちていく

きっと夢も見なくなるのだろう

幸せを想像する力も衰えて前に進めなくなった足をやがて止める

想いに化けた記憶は感情で薄れゆく

焼き付けようとすれば溶け、包み込もうとすれば砂のようにすり抜けた


だけどその後の生活がどんなに空っぽでも はたまたどんなに濃密でも

同じように僕の恋心は色褪せないだろう

時とはそれほど絶対的な存在価値を持ち

そして同時に

この淡く激しい想いの前にはとてつもなくちっぽけだ


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