未知なる敵との遭遇

アーレットとフロストは、未知のザエンドを探すためにグランブルー駅に到着していた。


「で、これからどうするの?」

「それはこっちの台詞よ。あなたがインテリ担当でしょ?」


「センターがいまだにこのザエンドのクラスを特定できず、正確な位置情報も送られてこない。限界がある以上、俺にもどうしようもない。」


「つまり、あんた役に立たないってことね。」


「好きに解釈してくれ。……ところで、視力でも悪いのか? それとも、そのゴツいメガネでモンスターが見えるのか?」


「これ?もちろん視力悪いに決まってるでしょ。もしこれがザエンド専用のゴーグルだったら、街中でこんな堂々と着けてないわよ。一般人が見たらビビるっての。」


「たしかに、街中での着用は禁止されてる。けど、さっきのセンターの人への態度見て、例外的に許可されてるのかと思ったよ。ってことは、普段は普通のメガネで、戦うときだけ特別なやつに替えてるのか。」


「その通り。視力矯正用のザエンド対応ゴーグルなんて存在しないから、こうやって使い分けるしかないの。」


「了解。」


フロストはバッグから何かを取り出した。


「これ、使ってみろ。」


「え? 何これ?」


「かけてみなよ。」


アーレットはフロストの差し出した黒いサングラスをかけた。


「何これ、普通のメガネじゃん。しかも黒とかダサいし、赤の方が絶対似合うのに。」


「レンズ横のボタン押してみろ。」


アーレットが言われた通りにボタンを押すと、レンズの色が赤に変わった。


「おおっ!?カラー変換!すごいじゃん!」


「はしゃぐのは早い。もう一度、今度はボタンをダブルクリックしてみろ。」


アーレットが操作すると、表示インターフェースが切り替わり、ザエンドを感知できる専用モードが起動した。


「これは…!ザエンド探知モード!?本物の特殊ゴーグルじゃん!どうやって作ったの!?」


「ドクターの秘密だ。」


「ありがとう、これでいちいちメガネを替えなくて済む。やっとあんたがDRとして本気出してくれたってわけね。…お腹空いた。あそこのファストフード行こ。」


「おごってくれるなら異論なし。」


「感謝の気持ちだよ、好きなだけ食べな。」


「後悔すんなよ。」


二人はすぐ近くのファストフード店に入った。


「何頼むの?」


「そうだな…。チキンプレート、ピザ5枚、バーガー5個、ターキーフライ盛り一皿、それからアイス3個で。」


「……ほんとに食べ切れるの?」


「そっちこそ支払えるのか?」


「当然!お金ならあるから。」


「じゃあ俺も完食する。ところでさ、お金持ちのお嬢さんがなんでハンカーやってんだ?強くなりたいって理由以外にさ。」


「それだけよ。」


「嘘だな。」


「……やっぱりあなたには誤魔化せないのね。でもこれは私の個人的な問題。言えないわ。」


「了解。理由があるってことだな。」


そのとき、見知らぬ男が突然彼らのテーブルに座ってきた。


「いやぁ、愛っていいもんだねぇ。」


「は?誰!?どっから湧いてきたのよ!」


「邪魔するつもりはないよ。ただ君たちが『ハンカー』って言ってるのが聞こえてね。もしや、君たちもハンカーなのかい?」


「で、お前は何者なんだよ?」


「俺?俺もハンカーさ!しかもナンバーワンだぜ!」


「なにそれ笑える。見た目ボロボロじゃん、ホームレスかっての。」


「ホントなんだってば!」


「うるせーな、さっさとどっか行けよ!」


「うわっ、彼氏さんこえぇ……いやいや、俺の名前は『ボウヤ』って呼んでくれ!」


「名前なんか聞いてねぇよ!あっち行けっての!」


「ちょっと待ってフロスト、話だけでも聞いてみようよ。ここじゃ私が命令する立場なんだから。」


「わかったよ、どうせメシ食ってる間だけだし。」


「それで、ボウヤ。あなたがここにいる理由、教えてくれる?」


「デートの約束してたんだけど、どうも相手に逃げられたみたいでさ。」


「……しょぼ。」


「愛がすべてなんだよ、俺にとっては。」


その瞬間、近くの路地から悲鳴が響いた。アーレットとフロストは慌てて現場に駆けつけた。


そこには、子供をむさぼるザエンドの姿があった。


「うそでしょ…」


「裸眼で見える…?」


「俺、元からゴーグル使ってない。」


怒りに駆られたアーレットは、手首のウォッチを起動させた。


「ウォッチアクティベーション・ナンバー1!!」


彼女の腕から巨大な剣が出現。


「足りないわ…本気を出さなきゃ!」


「ウォッチアクティベーション・ナンバー5!!」


剣はロボットに変形し、アーレットが操縦席に収まった。ロボは空高くジャンプし、ザエンドに斬撃を浴びせた。


「すごい…一撃で仕留めたか?」


だが、ザエンドの体は分裂した部位から再生を始めた。


「再生能力だと!?ザエンドにそんな能力があるなんて…!」


再び襲い掛かるザエンド。ロボは破壊され、アーレットは投げ飛ばされてしまう。


「代わりに俺が出る!」


「ダメ!まだ私は生きてる、それがルールでしょ!逃げるしかないわ!」


その瞬間、ザエンドが目の前に現れた。


「もう逃げるのか?期待外れだな。」


「こいつ…喋った!?」


「俺の探し物を持ってる人間がこの中にいる…お前か?」


「何のことよ?」


「違うようだな。なら…死ね!」


が、ザエンドの一撃が届く前に、数体のハンカーロボットが現れ、怪物を斬り刻んだ。


──つづく。


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