動物たちの声が、未来を教えてくれた

Chocola

第1話

風のない昼下がり、木漏れ日の下で、少女は寝転んでいた。

 長い黒髪を草の上に散らしたまま、気持ちよさそうに目を閉じている。彼女の周囲には、猫、犬、ハト、リス、時には鹿まで——不思議なほどたくさんの動物たちが集まってくる。


 四十物愛梨(あいものあいり)、十五歳。

 彼女には、人にはない特別な力があった。動物たちと、心で話すことができるのだ。


 はじまりは、7歳の夏だった。

 波の高い海で泳いでいた愛梨は、沖合へと流され、力尽きかけた。そのとき、イルカの群れが彼女を囲むようにして現れた。

 ——「だいじょうぶ、きみを助ける」

 聞こえた声は、確かにイルカのものだった。


 以来、彼女は動物たちと心を通わせられるようになった。鳥たちとは視線で、虫とは息づかいで、爬虫類とは皮膚の感覚で、そして哺乳類とは……なぜか少し距離がある。


 実は、彼女は「動物を導いてきた一族」の生まれ変わりだったのだという。

 その真実を知った日、愛梨は心に決めた。命を救ってくれたイルカのように、誰かのために生きようと。

 それから、彼女は獣医になるという夢に向かって歩きはじめた。


 今日も彼女は、外で眠っていた。

 気がつけば、またいろんな動物たちが集まってきている。

 まるで彼女が「帰る場所」だと知っているかのように。


 言葉はなくてもいい。心がつながれば、それでいい。

 それが、四十物愛梨の「日常」だった。

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動物たちの声が、未来を教えてくれた Chocola @chocolat-r

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