張紙

掲示板に、騒音についての注意書きが貼られていた。


「506号室の住人の方へ」


見慣れない部屋番号だった。

このマンションに、そんな部屋はあっただろうか。


誰も気にしていないふりで、紙の前を通り過ぎていく。

誰も剥がさないし、誰も書いたことを名乗らない。


翌週、また新しい紙が貼られていた。

文面は同じで、筆跡だけが少しずつ違う。


静かな夜。

エレベーターの扉が、誰も乗っていないのに5階で止まった。


メモ

紙が増えるごとに、掲示板の位置が少しずつ左にずれている

506という数字が、別の張り紙にも現れるようになった

紙の端がいつも、わずかに湿っている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る