第13話 コットの力

「ハンナが使っていた物なら何でもいいから持って来てちょうだい。」

コットが呪術でハンナの居場所を探そうとしている。

「こちらがございます。」

メイドから受け取ったのはハンナが使っていた櫛だった。

「櫛かあ。まあいいわ。」

コットは自分の部屋に行きその櫛をハンナに見立てた人形に持たせた。ブツブツと呪文を唱え始めた。

「ああ、ハンナの力は強いから感じやすいわね。これならすぐに見つけだせそうね。」

コットは不敵な笑みを浮かべた。

だが直ぐにコットの顔は鬼の様な形相に変わりイライラし始めた。


「何故だ。おかしい。ハンナの居場所が術に反応しない。」

コットは呪術の呪文をやめた。


「ハンナとエクラの他に誰か居る気配はあったが急に三人の気配が消えただと。まさか何かが私の術を跳ねのけてるのか?そんな事を出来るわけないはずだが。」

コットは自分の呪術には絶対の自信があり今までこんな事なんてなかったのに、思いがけない事に益々イライラして来た。

“コンコン”

「コット様、皇帝陛下がお呼びです。」

その時若いメイドが呼びかけた。そのタイミングにコットのイライラは頂点に達した。

「誰が声をかけて良いと言った。」

コットはメイドを睨んだ。

「申し訳ございません。皇帝から直ぐに呼んでくるようにと言われたので。」

メイドはガタガタと震えながら謝った。

「うるさい。黙れ小娘め。」

コットはそう言うとそのメイドに向かって呪文を唱え若いメイドの魂を吸い始めた。するとそのメイドはみるみるうちにミイラの様になり息絶えた。コットはそのメイドの亡骸に呪文を唱え灰にした。



「皇帝、御用かしら。」

コットは何食わぬ顔で皇帝の元へ行った。

「ハンナの居場所は分かったか?」

皇帝がウイスキーを飲みながら質問した。

「いいえ。まだですわ。」

コットは無表情で答えた。

「何をしておるのだ?そなたらしくないな。」

「まだ遠くに行ってないはずなのにハンナの反応が見られないわ。エクラも一緒のはずなのにそれすらも反応がないのはおかしい。まさか死んでるのではないのかしら。」

皇帝は眉間に皺を寄せため息をついた。

「コット、それは困るぞ。早く探すように。」

コットはキッと皇帝を睨んだ。

「私に指図しないで。明日もう一度探すけど、今度はタイミング悪い時にメイドなんて寄こさないで。」

そう言うとツカツカと自分の部屋に戻って行った。コットが部屋に戻るとアンベス皇子が待っていた。

「コット。どうしたんだい。そんな怖い顔をして。」

「いえ、何でもないわアンベス。ねえ、ハンナが居なくなったのに貴方は寂しくないの?」

「あんな男みたいな女、気持ち悪いだけだよ。コットの様に美しくないと。」

アンベスのその言葉を聞いてコットは自分の力がきちんと持続している事を確認した。

「アンベス、ああ、貴方が私の婚約者なら良かったのに。」

コットが艶めかしい表情でそう言うとアンベスは心を打ちぬかれた。

「コット。きっとエトワールはこのまま目を覚まさないだろう。ハンナも出て行ってくれたしいつでも君の物になれるよ。」

「まあ。アンベス。嬉しいわ。」

コットはそう言うと不気味な笑みを浮かべてアンベスの首筋にキスをした。





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