概要
夢の奥で、母は青に溶けていった
母が亡くなった日、庭に初めて咲いた紫陽花。長年二人きりで暮らしてきた僕は、誰にも知られずにその死を見送り、静かに日常へ戻った。
母の死から二週間後、小さな小包が届く。宛名はもういないはずの母。中には、彼女がよくつけていた紫陽花の簪が入っていた。
それを手に取った瞬間、幼い頃の「夢」がよみがえる。
母に手を引かれ、見知らぬ青一色の街を歩く夢。
夢の中で僕と母は決まってある屋敷へと向かい、屋敷につくと母は僕の手を離し、嬉しそうに駆けてゆく。
僕もそのあとを追うが、青い塊が津波のように押し寄せ、僕を飲み込んでしまうのだった。
今となっては、あの夢の断片がどこまで現実だったのか、僕にはわかる。そして、母がどこへ向かっていたのか、何を隠していたのかも。
それでも僕は、母の微笑みを憎めなかった。
母の簪
母の死から二週間後、小さな小包が届く。宛名はもういないはずの母。中には、彼女がよくつけていた紫陽花の簪が入っていた。
それを手に取った瞬間、幼い頃の「夢」がよみがえる。
母に手を引かれ、見知らぬ青一色の街を歩く夢。
夢の中で僕と母は決まってある屋敷へと向かい、屋敷につくと母は僕の手を離し、嬉しそうに駆けてゆく。
僕もそのあとを追うが、青い塊が津波のように押し寄せ、僕を飲み込んでしまうのだった。
今となっては、あの夢の断片がどこまで現実だったのか、僕にはわかる。そして、母がどこへ向かっていたのか、何を隠していたのかも。
それでも僕は、母の微笑みを憎めなかった。
母の簪
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