カエル女を覚えていますか?
機村械人
カエル女を覚えていますか?
『カエル女』という都市伝説を覚えていますか?
2000年代中頃に流行った、チェーンメール(不幸の手紙のメールver)の一種です。
ある日突然、カエル女という、緑色の肌をした女の顔写真が添付されたメールが送られてくる。
メールの内容を簡単に説明すると、このメールを受け取った人は添付画像を付けた同じ文面のメールを一週間以内に1500人に回さないといけない。
さもないと、カエル女が殺しに来る。
もしメールを回すのが無理な場合は、その添付されているカエル女の顔写真を一週間携帯の待ち受けにする。
というもの。
このチェーンメールの悪趣味なところは、その期間と規模。
一週間以内に1500人にメールを送るなんてほとんどの人間が不可能でしょう。
であれば、大抵の人間は一週間の待ち受け設定の方を選ぶ。
携帯を開く度、気味の悪い緑色の女と対面しなくちゃいけないなんて、それだけで気分が滅入る。
しかも、一週間もの間。
中々の嫌がらせです。
……ありましたよね? そんな都市伝説。
なんでそんな話をし出したのかというと……。
少し前、知人がそれを受け取ったと報告してきました。
何の気無しに迷惑メールフォルダを整理していたら、見付けて思わず開いちゃったと。
うわ、懐かしいなんて言いながら、今ならラインとかチャットアプリがあるからメッセージ送るのも昔ほど面倒じゃないよね、なんて話をしました。
でも当然、知人はそのメールを誰かに送ったりとか、待ち受けに設定したりとかはしなかったようです。
その知人が、先日死にました。
カエル女のメールを見てから、一週間後。
しかも、かなり異常な死に方をしていたと聞きました。
体の中が、空っぽだったとか。
その時の私は、そんなことよりも友人が死んでしまった事実に心が追い付かず、他の事など考えられない状態でした。
それから数日経った日、私のスマホにメッセージが届きました。
カエル女のメールの文面と、画像。
不覚にも見てしまいました。
差出人は身に覚えのないアドレスでした。
あれから6日が経ちました。
私の体に異変が起きています。
メールを受け取ってから数日経ったあたりで、左足のつま先――親指の爪の下に、小さな黒い痣ができていました。
どこかでぶつけて内出血してしまったのだろうか、と、放置していました。
それから時間が経つに連れ、痣はどんどん大きくなっていきました。
そして今、痣は爪の下だけではなく、親指の根元くらいにまで浸食しています。
指全体が鬱血したように赤黒く染まっています。
親指は腐ったようにぶよぶよとなり、膨れた肉が爪を押し上げて、爪がほとんど剥がれてしまっています。
その剥がれた爪の下から、ヌルヌルした膿なのか粘液なのかわからないものが滲み出てきます。
恐ろしいのは、爪が剥がれて指が腐りかけのようになっているのに、痛みがない事です。
恐怖とおぞましさからおかしくなり、私は親指の爪を摘まんで、ベリッと引き剥がしてしまいました。
すると、爪に引っ付いた下の肉が、ズルルルルと、親指の中から引きずり出されました。
肉かと思いましたが、違いました。
ぶよぶよで湿った透明な管。
その中に丸い球体が幾つも詰まっています。
まるで、カエルの卵。
……そこで、ある事に思い至って、軽く調べました。
カエル女のメールの内容について。
――1500人にメールを送る。
1500って、ヒキガエルが一度に産む卵の数がそれくらいだそうです。
――もしも無理なら、画像を一週間待ち受けにする。
一週間は、ヒキガエルの卵が孵る日数。
あの文面――。
メールを送れなかった場合、カエル女が殺しに来る。
その後に書かれた、一週間顔写真を待ち受けにするっていうのは、別に助かる方法ではなかった。
1500人に送れないなら、代わりに子供を産め。
そういう意味だった。
それが、カエル女の呪い。
この卵紐は、既に私の体内まで浸食しているのかもしれません。
あと5時間ほどで、メールを受け取ってから一週間が経過します。
そうなったら、ズルルルル、と。
親指の爪先から卵紐が抜けて、夥しい量の何かを産んで、私は体が空っぽになって死ぬ。
お願いします。
もし、カエル女の呪いの対策方法を知っている方がいたら、教えて下さい。
もう手遅れなのかもしれませんが、こんな死に方は嫌です。
助けて下さい。
助けて下さい。
あんなに有名だったんです、きっと何か他の情報を持っている人もいるはず。
覚えていますよね? カエル女。
ありましたよね? カエル女の都市伝説。
https://kakuyomu.jp/users/kimura_kaito/news/16818622177793720200
カエル女を覚えていますか? 機村械人 @kimura_kaito
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