鉄のブランコ

ビビりちゃん

第1話 鉄のブランコ

夜の11時、灯りの消えた公園に高校生のユウカは一人で足を踏み入れた。友人の挑発に乗せられ、「深夜のブランコで10分過ごせたら、願いが叶う」という噂を試すことにしたのだ。

誰もいないはずの公園には、風もないのに、ぎい…ぎい…とブランコの軋む音が響いていた。ユウカは息を呑み、スマホのライトで辺りを照らす。草は静止したままだが、ブランコは確かにわずかに揺れている。

恐る恐る近づき、ユウカは金属製のブランコに腰を下ろした。座面が冷たく、背筋を伝う寒気に思わず身を縮める。カウントダウンのタイマーを起動し、彼女は震える手でスマホを握りしめた。

3分が経過した頃、背後から小さく笑うような声がした。振り返っても誰もいない。ただ、別のブランコが静かに動き始めていた。

「誰か…いるの?」

応える声はなかったが、その代わりに、ユウカのスマホに通知が届いた。画面には写真。それはさっきまで自分が座っていたブランコに、黒髪の少女が乗っている姿だった。

けれど、今そのブランコには——誰もいない。

その瞬間、風が吹き抜け、背後で「ブランコ、代わって」と少女の声が響いた——

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