第二話 異常を胸に


【第二話 異常を胸に】

「悪魔がわからない!?」

「ええ、検査にもなにも引っかかりません。」

「それは、悪魔がいないってこと?」

「悪魔がいるんじゃないのー?」

「いえ、能力を持っている限りいるはずです。」

「じゃぁ、なんで検査に引っかからないのよ」

「考えられるのは、私たちの検査キットが粗末で検知できないということぐらいだ。」

「一度能力を試してみましょう。そうすれば、少しはわかるかもしれません。」

「ゼロ、行くよ。」

「はーぁい」


「ゼロ、あの的に向かって、バロンに向けて使ったあれをやって」

「わかった。」

《指で空中を摘み、引っ張ると歪みが起こり、歪みが空中を伝播し的を、切り裂いた。それは瞬間のことで速さ云々の次元にいない!》

「これは!」

「なんかわかったの、先生」

「何もわからない」

「はぁ?」

「40年能力医をやってきて…それでも、これは…わからんのだよ」

「なによそれ、」

「もっと大きな機関なら何かわかるかもしれんが…危険だと思うぞ。運営は契約者を重宝しておる。」

「ゼロみたいな純粋で強力な契約者なんて、運営は喉から手が出るほど欲しいでしょうね。」

「あんね、なんの話?」

「ゼロの話よ。」

「へーー」

「アンネ、お前さん。シベリアンラプソニー参加者だろ?その子どうする気だ?」

「ゼロは着いてくる気でいる。」

「私は連れて行かないべきだと思う。その子は未知数も未知数、何が起こるかわからん!」

「開催日はまだ先。ゆっくり考えるわ。」

「そうしなさい、すぐに決める必要なぞないのだから」


「難しそうな話してた、あんね」

「ゼロ…自分の能力について、理解してる?」

「うん」

「じゃあ、教えてくれる?」

「空気を弾いたら、別の場所も弾けるし、叩いたら別の場所も叩けるよ。」

「空気を弾く?」

「例えばここを弾いたら、あの石も弾けるし、叩いたら、あの石も叩けるよ。」

因果や概念のズレ、まるで空間を支配している。

「いや、ぇ?…うぇ?」

(どういうこと?いや、説明はわかりやすいし、理解したよ!?けど文字通り次元が違う‼︎)

「ねぇ…あんね。」

「…どうかした…の?」

「他にも、やれる事あった気がする。」

(今既に多彩なのにまだやれるの!?けど気がするってことは分かってないのか)

「いつか、わかるかな」

「記憶ってね、ふとしたときに蘇るものよ。だから、大丈夫。」

「うん…」

「ゼロの能力、名前が欲しいわね。」

「うーんと、えーーーっと………D&Wデューティーウォー?」

《DとW。義務、そして戦争、戦争とは程遠い存在が何かを背負っていた。》

「D&W…それが能力の名前?」

「たぶんそう、かな。なんとなく、そんな気がする」

「ゼロはシベリアンラプソニーに本当に参加するつもりなの?」

「私は、行くべきだと思う。シベリアンラプソニーに」

(これが、ゼロと私の最初の思い出。そして、非現実の始まり。)

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