poetry series「信じてくださいズ」

わなざわはじめ

君たちは明日から二度と皮肉を言うことができなくなってしまう

君たちは

明日から二度と

皮肉を言うことができなくなってしまう


その呪いの起源は中国は夏王朝の時代まで遡る

夏王朝の賢いんだかバカなんだかわかんないある道士が

「皮肉」という 人類史とともに 歩んできたとも言える

偉大なるレトリックを 憎み飽き飽きたのだった

怒りに任せて放たれた皮肉というもののなんと愚かしいこと!

何が愚かしいって 大概何にも面白くないのに

みんな言ってやったって気持ちになってるってこと

そしてその愚かしさを嘆き 怒りを鎮めなさい 怒りなど無駄だと したりさとさんとする者のなお愚かしいこと……

何が愚かしいって そいつはお前みたいなやつにこそ怒ってるんだっつうの


しからば 夏王朝の賢いんだかバカなんだかわかんないその道士!

皮肉というものが一つ 世にこぼれるたびに

天を衝く塔の上に置かれた大釜の中に

小豆が一粒 こぼれるように まじないを込めた


小豆が大釜になみなみあふれるころには

大釜はその重みに耐えかねてバラバラに割れ……

空からは腐った小豆が降り注ぎ……

おれたちの世界は 腐った小豆まみれになってしまうだろう……


どうしてそんな迂遠なまじないにしたのかはよくわからんが

それもやつなりの皮肉だったのかもしれないね

全然面白くないし……



おれは今日の昼間方 その大釜を見に行ったんだ

大釜を見に行って そいつになみなみと溜まった

腐った小豆を見た


明日にはこの大釜はバラバラに割れて

世界は腐った小豆まみれになってしまうんだな と思ったよ

そんな頃合いだなと思ったよ

その足でおれはここに来たよ


呪いは明日成就するだろう……


大人の喧嘩をする君たち……

それを見て手を叩く君たち……

かつて賢かった君たち……

かつて賢かった君たちを

バカにしていた君たち……


賢いので先回りで皮肉を言う君たち……

影で君たちの皮肉を言う

もっと賢い君たち……

日向で君たちの皮肉を言う

もっともっと賢い君たち……


そして本当は……

最初からバカだった おれたち……


呪いは 明日 成就するだろう!


最初からずっとバカだったおれたちは

途中からそれに気付いてたおれたちは

いつからかずっと求めていた報いを

明日

受けることになるだろう!


フン……


君たちがこの世界を 腐った小豆まみれにしたければ

世界最後の日のために

世界最後の瞬間に言うための

世界最高の皮肉を考えておくんだな


そして君たちが この世界を 腐った小豆まみれにしたくないと 思うのならば

明日も明後日もこの世界に生きていたいと思うのならば

君たちは明日から二度と 皮肉を言うのをやめて……


いや……


いや 君たちがこんな話を信じるとは思えないから

やはりこの世界は明日

腐った小豆まみれになるんだろう

やっぱりこの世界は 皮肉な最後を迎えるってことになるんだろう


ああ!

ということはつまり!

どちらにしたってつまり

君たちは明日から二度と……




《公開時コメント》

(2018年8月19日 ポエトリースラムジャパン2018東京Bのために)


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