「影に溶ける」

人一

「影に溶ける」

「思いだした…」

{え?なにが?}

「数学の課題明日提出じゃん。全然やってないよ。」

{まぁ別にいいんじゃない?ちょっとやってなくたってバレないよ~}

「そうかな…でも、あなたが言うなら信じちゃうかも!」

「あっ、今日教室の掃除当番なんだった。どうしよう忘れてたよ。」

{それももういいんじゃない?日も落ちかけて暗くなってきたし…あんまり暗い時に帰るのは危ないよ?}

「確かにそうだよね。遅くなるとお母さんに、怒られちゃうもんね!じゃあ帰ろっと。」

「お母さんと言えば、お使いも頼まれてるんだった…」

{暗い時間に出歩くのは危ないってさっきも言ったよね?一度帰ってお母さんと一緒に行くのはどう?}

「それめっちゃいいね!お母さんにお願いしよっと。」

{じゃあ暗くなる前に帰るよ~そうだ日焼け止め忘れたから…今日はこっちの道で帰らない?}

「えー?その道街灯ないし、もう暗くて怖いんだけど…」

{大丈夫!こっちは日焼けしなくてすむし近道だからすぐに帰れるよ}

「えぇ~どうしようか――…ねぇ、ちょっと待ってよ!ついて行くからおいていかないで!」

{早く早く来てよ!}

「ねぇ、そんなに走らないでってば!待ってよ――


 ――彼女は自らに誘われるように森へ踏み入れたが、それ以降彼女の行方を知る者はいない。

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「影に溶ける」 人一 @hitoHito93

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