リシアが加わり、宿舎での生活はますます賑やかになった。俺は、セシリア、リリア、ルナ、エリス、リシアに囲まれ、充実した日々を送っていた。しかし、そんな俺の平穏な日常に、新たな変化の兆しが現れる。

ある日の午後、ギルドでリリアと依頼の打ち合わせをしていると、突然、部屋の空気が変わった。ピリッとした緊張感に包まれ、誰もがその人物に注目する。

「おや、そこにいるのが噂の佐々木健太ですか」

低く、しかし芯のある声が響いた。振り返ると、そこに立っていたのは、知的な雰囲気を漂わせる長身の女性だった。身につけているのは、高級な魔術師のローブ。その立ち姿には、並々ならぬ威厳が感じられた。ギルドの職員も、他の冒険者たちも、皆一様に畏敬の念を込めた視線を向けている。

リリアが、はっと息を飲み、驚いたようにその女性に深々と頭を下げた。

「ユフィリア様！　このような場に、まさかユフィリア様が……！」

リリアのその言葉に、俺は疑問を抱いた。

「ユフィリアって、誰なんだ？」

俺が小声で尋ねると、リリアは驚いた顔で俺を見た。

「ケンタさん、ご存じないんですか！？　ユフィリア様は、この王都で知らない者はいないと言われるほどの、宮廷魔術師にして天才魔術師ですよ！」

リリアの説明に、俺は目を見開いた。まさか、そんな人物が俺の前に現れるとは。俺はそのただならぬ雰囲気に圧倒され、思わず息を飲んだ。

ユフィリアは俺を一瞥すると、何の躊躇もなく俺の目の前に歩み寄ってきた。

「私の名はユフィリア。あなたについて、興味深い噂を聞きました。美女たちを連れている、未知の魔法でも使ったのではないか、と」

彼女の言葉に、俺の心臓はドクンと鳴った。

（魅了スキルがバレてる……？いや、そんなはずは……）

「魔法？そんなわけないだろ」

「でも街の人達の噂では、魔法だと」

そう言ってユフィリアはジロジロと俺を見てきた。ユフィリアの瞳が、俺の目と合った。

（この子も、めちゃくちゃ可愛いな）

俺がそう思った瞬間、脳裏にあの感覚が走った。

「スキル『魅了』が発動しました」

（しまった！）

バレるかと思ったが、ユフィリアの表情は微動だにしなかった。彼女の瞳には、一切の感情の揺れが見られない。ただ、俺の能力に対する純粋な、そして底知れない探求心だけが宿っている。

「やはり……私の推測通り、あなたからは極めて特異な何かを感じる。……既存の魔術理論では説明がつきません」

（バレたか……？）

ユフィリアは俺の顔をじっと見つめながら、まるで魔術書を読み解くように淡々と分析を始めた。俺は彼女の冷静な分析と、魅了スキルが発動してもなお揺るがない姿に、ただ呆然とする。

「あなたには、私の研究に協力してもらいます。私の研究室に来なさい。あなたからなぜ特異な何かを感じるのか、私が魔術的に解明してみせましょう」

有無を言わせぬ、一方的な口調だ。拒否権など、まるで与えられていない。俺は彼女の有無を言わせぬ態度に圧倒されながら、俺は、ただ頷くことしかできなかった。