第2話

 セシリアに連れられ、俺は王都の巨大な門をくぐった。分厚い石造りの門を抜け、その一歩を踏み出した瞬間、俺は目の前の光景に息をのんだ。目の前に広がるのは、石造りの建物が空に向かってそびえ立つ、今まで見たことのない都市だ。その高さは、重厚な迫力があった。通りには、色とりどりの衣装をまとった人々が行き交い、まるで生きているかのようにざわめいている。


「おい、これ、すげえな……」


 俺は思わず声を上げた。馬車の蹄の音が石畳に響き、露店からは活気ある声が飛び交う。「新鮮な果物はいかが!」「焼きたてのパンだよ!」そんな声が入り混じり、どこからか漂ってくる香辛料の匂いは、俺の嗅覚を刺激した。全てが俺の知る世界とはかけ離れていて、ただ圧倒されるばかりだった。


「黙れ。周りの迷惑になる」


 セシリアは俺を一瞥したが、何も言わず、ただまっすぐ前を見て歩き続ける。俺は慌てて彼女の後を追った。彼女の歩調は速く、俺はついていくのがやっとだった。


「なあ、ここって、どこなんだ?もっと詳しく教えてくれてもいいだろ?」


 俺が再度呼びかけると、セシリアは立ち止まらずに冷たく言い放った。


「王都だ。それ以上、お前に話すことはない。ぐずぐずするな。王都で迷子になっても、私は責任を持たない」


 俺は、その言葉に反論する気力も失い、ただ彼女の背中を追う。人ごみの中を歩いていると、ふと、脳裏にあの感覚が走った。


「スキル『魅了』が発動しました」


 その後、俺は奇妙な視線を感じた。まるで自分の動きを追いかけているかのような視線だ。道の反対側で、一人の女性が俺を見て微笑んでいる。艶やかな黒髪を揺らし、俺に視線を送ってくる彼女は、まるで絵画から抜け出してきたかのような美人だった。女性は俺に近づこうとする素振りを見せる。


「何をしている?立ち止まるな」


 セシリアが俺を急かす。


「いや、なんでもない」


 俺はそう言って、足早にセシリアについていく。


「急げ」


 セシリアは俺を一瞥すると、さらに速度を上げた。俺は背後で女性の視線を感じながらも、ただセシリアについていくしかなかった。王都の喧騒が、俺の心の動揺をかき消すように響いていた。

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