第2話

第2話



 私は、鬱屈する心情を慰めたく、余暇は自然の森へ出かけることが多々ある。


 残暑だが森の中の空気は冷たく、柔らかな陽射しまでもやけに気持ちいい。


 聖地では、聖魔界であっても魔物に遭遇することは稀。


 私は、自他ともに大人しい見た目よりも好奇心は旺盛。


 気兼ねなく道なき道を探検することを好んでいた。


 太陽は、天頂近くなり、正午前であることを告げている。


 緑深い自然の森を、私が心おきなく堪能していたその時。


 私は、ちくちくした棘のある木に気を遣いすぎた。


 自分の足元すぐ近くに隠れていた裂け目に気づかず、私はそのまま堕ちてしまった。


「!」


 私の足場の地面は、あっさりと崩れてしまう。


 あまりにも思いがけないことに、私は声を上げることが出来なかった。


 そのまま岩だらけの裂け目の中に、小さな身体はあっというまに呑み込まれていく。


 私は、恐ろしい数秒間の落下の後。


 肺から空気が叩き出されたような、ものすごい衝撃とともに着地した。


 私が息を吸おうともがく間も、砕けた岩や石が落ちてくる。


 ようやく苦しげに息を吐くと、私は口に入った髪の毛や土を吐き出す。


 私は、頭の中で自分の状態を把握しながら、自分の身体を動かしてみた。


 派手に落ちたので、私自身全身が傷だらけのような気がしている。


 穴に落ちながら、焦ってごつごつとした周囲の岩壁に捕まろうとしたため、私の両手から血が出ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る