最終話:またね
──その日、空はやさしく晴れていた。
ぴよを見送るための、小さな火葬施設。
あずの隣には、しーちゃんと今戸先輩が静かに立っていた。
「……ほんとに、ぴよちゃん戻ってきてたんだね」
松子がつぶやくように言った。
「ぴよの写真、田代さんに見せてもらったとき、
なんでか……素直になれた気がしてたのよね」
今戸先輩は遠くを見つめながら、微笑んだ。
「私も……しーちゃんと話せるようになったの、ぴよがきっかけだった。ぴよがいなかったら、ここまでこれてなかったと思う」
あずは手を合わせながら、胸の奥からこぼれるようにそう言った。
「……ありがとう、ぴよ。つないでくれた縁、大切にするね」
──
その夜。あずは部屋のドアを静かに開けた。
深呼吸して、そっとつぶやく。
「ただいま、ぴーちゃん」
その瞬間、モニターがぱっと光を灯す。
『にゃー! おかえり! あず! 今日もおつかれさま!』
部屋の灯りがつき、ポットが湯を沸かし始め、風呂場からはお湯張りの音。
「えっ……!」
驚くあずの前で、猫語翻訳機が青く光りながら鳴る。
ピ…ッ!
手に取った翻訳機の画面には、短いメッセージが映っていた。
“またね”
あずは息を呑んで、それからふっと笑った。
涙が頬を伝うけれど、表情はやわらかい。
「……うん。またね、ぴよ」
モニターには、黄色のネオンで描かれた、まるっとした笑顔の顔文字がにっこりと浮かんでいた。
その隣には、
ぴよとあずと松子の3人で撮った写真が、写真立てに入って飾られていた。
──ぴよの気配が、今もそこにいるような気がした。
きっとまたどこかで会えるね。
---
完
にゃあまたね もちうさぎ @mochiusagi73
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