異世界日記

@KURONOINU

第1話 星巡りの暦 輝月の旬 七の刻

やあ、日記。やっと落ち着いてペンを握る時間ができた。俺、佐藤悠斗、元・日本の大学生。気づいたらこの「エラルディア」と呼ばれる異世界に放り込まれて、はや一週間だ。暦の呼び方も独特で、こっちでは「星巡りの暦」ってのが使われてる。1年が12の「旬」に分かれ、各旬は30の「刻」で構成されるらしい。今日は輝月の旬の七の刻、つまり7日目ってこと。慣れるまで頭こんがらがりそうだ。

朝、目を覚ましたら相変わらず木造の宿屋のベッドの上。窓から差し込む光がやけに柔らかくて、まるでアニメのワンシーンみたいだ。宿屋のおばちゃん(名前はリナさん、たぶん40歳くらい)が朝食にスープと硬いパン、それに謎の青い果物を出してくれた。果物、見た目はブルーベリーのデカい版だけど、味はリンゴとミントが混ざった感じ。異世界グルメ、悪くないけど毎日だと飽きそう。

この世界に来てから、俺の状況を整理するのに必死だ。どうやら俺は「召喚された者」らしい。図書館で借りた古い本によると、100年に一度くらいで異世界から人間が呼び出されることがあるんだって。で、俺はその「ラッキー(?)」な一人らしい。理由? さっぱりわからん。召喚した奴も姿を見せてくれないし、なんか放置プレイ感がすごい。

昼間は街をぶらついて情報収集。街の名前は「ルミエール」、石畳の道とカラフルな屋根の家が並ぶ中世ヨーロッパ風の場所だ。市場は活気があって、魚みたいな姿の鳥(!)や、輝く鱗の野菜が売られてた。通貨は「クリス」と呼ばれる銀貨で、1クリスが日本円で100円くらいの価値らしい。宿代が1泊3クリスだから、まあまあ安いけど、俺の所持金は謎の親切なおじさんがくれた10クリスだけ。そろそろ稼がないとやばい。

で、稼ぐと言えば、この世界には「冒険者ギルド」ってのがあって、モンスター退治や荷物運びの依頼を受けられるらしい。俺、大学では文学部で古文のゼミに入ってたくらいだから、戦闘スキルとか皆無なんだけど、この世界に来たらなんか「ステータス」ってのが見えるようになった。まるでRPGゲームだ。俺のステータス、こんな感じ:

• 名前: 佐藤悠斗

• 職業: なし(!)

• 力: 8(平均10らしい、弱っ!)

• 魔力: 15(ちょっと高いらしい)

• スキル: 言語理解(これのおかげでこっちの言葉がわかる)

魔力が少し高いのはいいけど、戦える気がしない。ギルドで話を聞いたら、初心者は薬草集めとか簡単な依頼から始めるのが普通らしい。明日、試しに登録してみようかな。ただ、市場で聞いた噂だと、森の奥に「ゴブリン」ってのが出るらしい。ゴブリンってあの、弱いけど気持ち悪い緑のやつだろ? やめてくれ、俺のメンタルはまだ準備できてない。

夕方は宿屋の裏庭でリナさんの息子、トム(10歳くらい)にこの世界のことを教えてもらった。トム、めっちゃ元気で、魔法の基礎を教えてくれるって張り切ってた。この世界の魔法は「マナ」を使って発動するらしいんだけど、俺、魔力はそこそこあるのにマナの制御が下手すぎて、トムに笑われた。火花すら出せなかったよ、情けない。

夜は宿屋の酒場で飯。スープに謎の肉が入ってたけど、聞かないことにした。隣のテーブルで冒険者っぽい連中が「魔獣の森で宝箱を見つけた」って話してて、ちょっとワクワクした。宝箱って! でも、その後「半分は死にかけた」って話してたから、俺にはまだ早いな……。

寝る前に、ちょっとだけ日本のことを思い出した。大学の友達とか、毎朝の満員電車とか、コンビニの弁当とか。あの生活、めんどくさかったけど、なんか恋しいな。この世界でどうやって生きていくか、まだ全然見えないけど、ひとまず明日はギルドに行ってみる。せめて薬草集めくらいは成功させたい。さて、寝るか。おやすみ、日記。


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