【短編集】揺感情
AIRO
静かな花火
夏。
蒸し蒸しする暑さ、昼はその暑さのせいか静かな気がする。夕方、涼しくなってくると外に出てくる人が増えてくる。私も、そのうちのひとり。
涼しいなぁ。
日中に、じんわりかいた汗が、吹いてくる風によって体を冷やしてくれる。
今日は、みんなで花火をしようってことになって、近くの河原に集まった。私がみんなを誘えるわけもなく、その場にいた流れで誘ってもらえた。クラスメートが、私を、大人しい人と思っているらしい。家では普通に話しているし、どう接すればいいか分からないだけ。
持ち寄った花火を自由に手に取り、それぞれが火を付けていく。両手に持って振り回したり、一度に何本もの花火に火を付けたりして、わいわいやってる。そんなクラスメートたちから少し離れたところで、私は、一つの花火に火を付けた。
パチパチと火花を散らしながら、暗闇を照らす。
花火の閃光を見つめながら考える。
誘ってもらえてなかったら、私も行きたいって言えたのかな。みんなみたいに、はしゃげないから、つまんなそうにしてるって思われてかな。本当はみんなと騒ぎたいのだろうか?そもそも、ここに来たかったのだろうか?
もっと単純に考えられたらいいのに——
いつの間にか、火が消えていた。あんなに光っていたのに。
みんなは、派手に花火を消費していく、使わなかったらタダのゴミになってしまう。大事に大事に、一本一本やろうがやらまいが、結果は同じ。なら楽しくやったほうがいい。
線香花火を手に取り、そっとロウソクの火にあてる。騒がず、この光を見つめ考えることが、私は好きだ。今のクラスメートとは、価値観が違うだけ、きっとそう。
騒ぐのが好きな人が多いだけなんだ。
友達ってなんだろう、何をすれば友達なんだろう。
ただ静かに、綺麗に燃え盛り、儚く消えていく様を見つめていける人に、私は出逢えるだろうか。
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