Ray.

南野 二丁目

風に花.

「____みて!サラ!風が吹いてるよ!花が揺れて綺麗だね!」

無邪気な彼女は今日も破天荒である。目を離せば路地裏のゴミ箱を倒して盛大にぶちまけるし、隙を作ってしまえば撫でくり回されてしまう。

そんな彼女を放っておく事ができないこの私____まぁ、姿形は猫なのだが。

猫である故、気まぐれな生活を送れるのは良いことだ。ここには彼女も居るし、縄張り争いに関しては無縁なのである。

この少女の名は "ルー" ...破天荒すぎる人の女の子である。

なんせ、小さい頃に親に捨てられたとかなんとかで、好き勝手やっているらしい。人の子も大変だこと。私も人のことを言えないのだが。


今日はやけに風が強い。空も曇り曇った空が立ち往生して動かない。そろそろ雨が降るのだろうか。

雨で濡れるのは嫌だ。私の美しい毛並みに手を出すなんて!!絶対許さない。


「あ!サラ!雨だよ!冷たくて気持ちいいね!」


タイムリーすぎる。私は咄嗟に物陰の下に身を潜め、彼女の襲来に備える。だって彼女は___


「みーつけたっ!ほらっ!雨だよっ!」

 

折角物陰に潜んで体が濡れぬようにしたつもりだったのに"ルー"は私を引っ張り出して無理やり水浴びをさせる。

人の世界では、これを"シャワー"と呼ぶらしい。詳しいことは知らんが。


私のずぶ濡れになった体を横目に"ルー"はニコニコしている。いつものことだ。あゝ気楽で良いこと。


そんな日常が続けばよかったのだが。

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