第二章 王都編

観測ログ28:到着と報告

 今回からいよいよ第二部スタートです!


舞台はベルツ村から王都へ。


新たな出会い、新たな謎。


ヴォイドたちの旅は、次のステージへと進みます。


※第一部を未読の方は、すぐに追いつけますのでぜひ一話からお読みください!



_______________




「うわあ……」


 ミアが目を丸くして声を上げ三人揃ってそれを見上げる。


 目の前には、そびえ立つ白壁と重厚な城門。その前にずらりと並ぶ人々。旅人、行商、隊商、貴族風の馬車──人と物と情報のすべてが、ここ王都に集まっている。


「門でこんな行列って、さすがにベルツ村とは大違いだな」


 ライガが腕を組みながら唸るように言った。


「王都に入るのも一苦労ってやつだね……」


 ミアが汗をぬぐいながら呟くと、馬車の御者がこちらを振り返って苦笑した。


「このくらいはまだマシな方だよ、嬢ちゃん。収穫祭の時期なんか、門の外にテントを貼って泊まり込みなんて時もある」


「うへぇ……お祭りのときには絶対に来ないようにしよ……」


「きっと、その時期はうまいもんも多いぞ」


 ライガがニッと笑って返す。あいかわらず食い意地が張っている。


 順番を待ちながら、門の上部を見上げると、兵士たちが警戒の目を光らせていた。槍の先が日光を受けてきらめいている。


 やがて検問の順番が回り、身分確認と簡単な所持品検査を終えると、ようやく入城が許された。


護衛依頼中ということもあり、ギルドタグを簡易鑑定の石板に当てるだけで済んだ。


「じゃ、いよいよ王都の中へ!」


 門をくぐると、広がる景色に思わず言葉を失う。


 石畳の大通りがどこまでも続き、その両側に立ち並ぶ建物は、どれもが二階以上の重厚な造り。赤茶や白、薄灰色などさまざまな色の壁が並び、屋根には青銅や赤瓦が使われている。


 軒先にはカラフルな布がはためき、通りを行き交う人々は人種も服装も華やかだ。


「な、なんか全部キラキラしてる……」


「歩いてるだけで金持ちになった気分だな」


街中に入った途端、肩に乗っていたはずのシュレイが、ふっといなくなった。


「……あれ? シュレイ?」


 ヴォイドが慌てて肩に手を伸ばすが、そこにはもういない。視線を巡らせると、少し離れた街角に、黒い毛並みが見えた。


 シュレイは一度だけこちらを振り返り、低く短く「ニャ」と鳴いた。


「おい、どこ行くんだ! 迷子になるぞ!」


 ヴォイドが声を上げるが、シュレイはまるで「大丈夫」とでも言うかのように、ゆっくりと二本の尾を揺らして人混みの中へ消えていった。


 その姿が見えなくなってから、ライガがぽつりと呟く。


「まあ、猫ってそういうもんさ。気まぐれで、勝手で、でも……」


「……ちゃんと帰ってくるんだよね」


 ミアがほっとしたように微笑む。


 ヴォイドも小さく息をついて、苦笑を浮かべた。


「まったく、自由なヤツだよ」


 馬車の停車場で依頼書にサインをもらい依頼は終了。

ギルドへ報告に行くわけだが、御者さんに聞いた道通りに行けるだろうか。


すると、馬車で同乗していた商人の青年が、笑いながら声をかけてくる。


「冒険者ギルドへ行くなら、この先の交差点を右に。ちょうど向かいの商業ギルドに寄る予定ですし、案内しましょう」


「助かります!」


 広い街の中、複雑な道を迷わず進めたのはその案内のおかげだった。途中、見かけた店や建物も印象的だった。


 香辛料専門の店、異国風の服を並べる仕立て屋、噴水広場に、魔法道具を並べた露店。見ているだけで時間が溶けていくようだった。


「ねえねえ、あとで行ってみよ、あの光る石の店!」


「ミア、買い物は後だ」


「えぇー」


 そんなやり取りをしているうちに、ひときわ大きな建物の前にたどり着いた。


 分厚い扉と堂々たる石の壁、上には見慣れた冒険者ギルドの紋章が刻まれている。扉を開けると、中はさらに驚くべき光景だった。



◆ ◆ ◆



 天井は高く、吹き抜け構造。シャンデリアの代わりに魔石の灯りが天井に浮かび、昼のような明るさを保っている。


 広いロビーの奥には、五つの受付カウンターが並んでいた。木製のカウンターにはそれぞれ看板が掲げられ、【依頼受注】【報告】【登録・相談】と分かれている。

朝と夕方で依頼と報告の窓口の数を調整しているようだ


 その周囲には、鎧姿の冒険者たち、書類を抱えた職員たちが忙しく行き交っていた。


「わあ……ここ、ほんとにギルドなの? なんか……役所みたい……」


「いや、役所より立派だろ。俺、あの奥の通路から出てくるヤツ強そうだなー!みんな俺たちより強そうに見えるぜ!」


 ライガが耳をピクリと動かして周囲を見回す。


 受付嬢たちは村と違い、制服らしき黒いベストとタイトスカートに身を包み、てきぱきと応対していた。


「……ベルツ村の受付のラナさん、依頼書の裏にメモ書いてたなあ……」


「そこ比べるとかわいそうだろ」


「受付が五人! しかも分業! みんな美人♪」


 ミアが大はしゃぎしていると、ライガが軽く肩を叩いた。


「お前ら、報告は任せろ。護衛の件、俺がきっちり話してくる。お前らは掲示板でも見てこい」


「リーダーたるもの、動かぬとな」


「よっ、さすがー!」


 ヴォイドとミアが適当に持ち上げると、ライガは颯爽と報告窓口へと向かっていった。



◆ ◆ ◆



 掲示板は三面構成で、ランク別に色分けされた紙がびっしりと貼られている。


「うわ、こっちの討伐依頼“金貨二十枚以上”って……これSランク依頼じゃない?」


「うちの村じゃ、Cランクがせいぜいだったのに」


「なんか“魔獣収容施設の暴走鎮圧”って……字面がヤバい……」


 珍しい依頼の数々に、ただ眺めているだけで面白い。


 そのとき、ライガが戻ってきた。


「報告終わったぞ。ついでに《静かなる剣》からの伝言も受け取った。受付の姉ちゃんが“もしかして《咆哮の剣》の皆様ですか?”だって。俺たち有名人だぜ!」


「有名人なのは《静なる剣》だろ」


「で、なんだって?」


「この場所がクランハウスだから夕方行こうに来いってさ」


「じゃあ、どっか見て回りながら向かうか。」


「お腹すいたー」


「さっきのキレイな石売ってた店に行きたい」


そんなやり取りをしながら、

三人は初めての王都の街並みへ歩き出した──。

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