祓い屋と契約結婚

春川楓

プロローグ

私には昔から、人には見えないものを見る力があった。


そのせいで、私の周りからは人が離れて行った。


『誰と話してるの?』


『もうあの子とは遊んじゃダメよ』


『気味が悪い子…』


そう友達や大人たちからは何度も言われてきた。


高校生になった今も、私は目立たないように、ひっそりと学校生活を送っている。


去年お母さんが亡くなり、私は一人になった。


お父さんは、私が生まれる前に亡くなっていると聞かされていた。


だからこうして、一人で生きていくしかない。


そう思っていた。


あの日までは…


「いらっしゃいませ」


いつものようにコンビニのバイトをしていた時、私は血の気が引くのを感じた。


お客さんだと思っていたそれは、体が透けて、目には黒い穴が開いていた。


とても人間には見えない。


どうしよう…


どうしよう、どうしよう…!


見た目からして多分悪霊だ。


相手に気づいていることがわかってしまえば、取り憑かれてしまう可能性がある。


悪霊が、私をみてニタァ、と笑った。


骨のように細い腕が私の方に伸びてくる。


まずい…!


私は咄嗟に目を閉じた。


しかし、しばらく経っても何も起こらなかった。


私が目を開けると、私と同じくらいの青年がいた。


「大丈夫?怪我しなかった?」


「はい…」


さっきの悪霊はどこにいったのだろう?


「まさかこんなところに悪霊がいたなんて。びっくりしたでしょ?」


この人にも、見えてるの?


「あなたも、見えるんですか?」


「うん。俺は祓い屋だからね」


この出会いが私の人生を大きく変えることになった。

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