本屋の思い出2

クライングフリーマン

本屋店員ー大阪編

 私は色んな仕事をしてきて、色んな黒歴史を紡いで来た。

 私は、人生で2度、本屋さんだったことがある。

 東京では、準備期間を含め半年位勤めた話(〇ん〇書店の話)。

 二度目は、大阪の、DVDレンタル&書籍販売の本屋さん〇〇堂のお話。

「研修」と銘打ち、他の店での「修行」を経験させられた。

 その時の話は、2つしか思い出せない。

 1つは、「昼休憩」が午後5時になった事件。

 店長は、突然配置され、「段取り」が出来ていなかったのかも知れない。

 その店では、繁盛店だったせいか、延べ5人の社員とバイトをローテーションで仕事させ、休憩も「1時間ずつ」交替で取っていた。

 ところが、私は「昼休憩」を与えられなかった。

 2日続いたので、本部部長に直訴した。

 店長は、他の支店と掛け持ちで、「気づかなかった」のだ。

 代理の社員は「いつも通り」にしたから、バイトの休憩が終っても尚、昼飯を食えない状態になってしまった。

 後になって考えると、「作業」を教えても、他は何も教えない社風だった。

 3日以降は、「真っ先」に休憩をくれたが、面白く無かった。

「鈍感さ」は男も女も関係ないのだ、と知った。

 2つは、小鳥乱入事件。

 多分、インコの一種だったと思う。

 店の外でエサをあさっていた小鳥は、帰り道が分からなくなり、店の中に侵入。女子店員の頭に乗ったりした。

 悲鳴を上げるから、逆に驚いて店内を、あっちに飛び、こっちに飛んだ。

 私は鳥を飼ったことはない。

 だが、ペットにしている人が指に乗せたりするのをテレビで観ていた。

 それで、飛び疲れて?ポスターの端に乗った小鳥に近づき、持っていたボールペンを水平にし、「乗れ!」と命じてみた。

 明らかに、野生ではなく、「人慣れ」しているようだから、他人でも応じるかも知れない、と薄ら思ったのだ。

 見事に、小鳥はポスターの端の紙から、ボールペンに乗り移った。

 私は、そっと店の外に出て、小鳥を放った。

 近くに、小鳥の「ご主人様」のクルマがあり、無事再会をしたようだった。

 傍目には、「慣れている」という感じだったろうが、最初で最後の体験だった。

「休憩無し事件」が効いたのか、転勤になった。

 今度は、大阪市内を外れ、私の郷里よりも南側の店で、本屋に就職したのに、普通の雑誌すら置いていない、DVDレンタル店。紙商品は、ビ〇本だけ。

 1ヶ月半だったかな。覚えているのは「夜勤専門」のシフトで、オヤジに頼んで、当家の営業ライトバンを借りていた。

 夕方、店(実家)にライトバンを取りに行き、出勤。

 夜中、自宅に帰って当家の前に駐車。

 オヤジが夜明け頃、ライトバンを取りに来て、市場に買い出しに行く。

 ライトバンは、1日20時間位稼働していた。

 何故、そうなったかと言うと、新しく買う余裕もなく、他に借りるあても無かったのと、その「南方の店」勤務が短期間限定だったから。

 確か。辞めた人のピンチヒッター、と言えば聞こえがいいが、「穴埋め」。

「南方の店勤務」から開放されて、また大阪市内へ。

 繁華街から外れたその店は、本店から程遠くない店だった。

 キオスクぐらいの小さな店だ。

 店長は、その店と「本店」を行ったり来たり。言わば、私は、留守番要員。

 色々あったが、「売り上げが合わない」と言われ、解雇になった。

 が、考えられる理由は2つあった。

 1つは、その店の売り上げは、本店に持ち帰り、合算して精算していたことに起因する。

 私は、支店を閉店させた後、本店に売り上げを納入、その後、帰宅の段取りになっていた。

 ところが、ある日。帰宅時間が迫る中、立ち読みの客がなかなか帰らない。

 基本的に、立ち読みはルール違反だ。30分粘ったところで、閉店させて下さい、とお願いしたら、「切れた」。「身障者をバカにしたら、どうなるか分かってんだろうな。」と捨て台詞を言い、帰って行った。

 断って置くが、「身障者」には見えなかった。単なる骨折で松葉杖しているだけだった。

 しかも、松葉杖になる前の姿も見ている。

 もう一つは、パートのおばちゃんが、後世に事件を起こした宗教団体の信者だったこと。

 店に、書籍コードの無い本が1冊あり、私は何度も「返品」の荷物に入れた。

 それが気に入らなくて、おばちゃんが金を「抜いて」いたのだと気づいた時は遅かった。小冊子の中身には、『分解写真』から地面から離れている瞬間を抜いた写真が載っていた。

 トリック写真というには、分かりすぎる写真で、後世、彼のポーズを再現したタレントがいたから、誰でも作れる写真だった。

 今なら、SNSや動画技術が発達しているから、小学生でも作れるだろう。

 何故、本の商品棚に、それが混じっていたかは分からない。

 おばちゃんには「変な本あるね」と、言えば無難だったのかどうかは判らない。

 返品の本に入れようとしていたのをおばちゃんは知っていた。

 留守番店員は、私とパートのおばちゃんとバイトのおねえちゃんがシフトを組んでいたが、基本的に店(のレジ)にいるのは1人。トイレ行くのも大変だった。


『実るほど頭の下がる稲穂かな』、その言葉を聞く度、あの東京の本屋の会長を思い出す。

 苦労を知らない人間は横柄だ。そして、正直者は、いつも「しわ寄せだけどたたき出せ」だ。

 あの宗教団体が事件起こして捕まった時、あのおばちゃんを思い出した。

「横領の濡れ衣」着せたおばちゃんを。

 ―完―




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