たん・たん・とた・たん
十六夜冬歌@読9書1
第1話
たん、地を蹴り1歩
たん、加速する2歩
とた、調整して3歩4歩
たん、踏み込み飛んで5歩
くるんっ、と身体ごと回って剣を振り、首を斬ったら、すとっ、と着地。
『グッ……ゲァ……』
ごとん、と頭が落ちて、びちゃびちゃ、と首から血を吹き出すゴブリンの身体が、ゆらゆら、ばたん、と倒れた。
「ふぅ‥‥」
ずっしり、と重たい剣を、ぶんぶん、振って血を飛ばしたら、ぐさっ、とゴブリンの身体にナイフを刺して、ぐりぐり、とお腹を開いて魔石を取り出した。
「さて‥‥と」
そして次にゴブリンのすぐ側の石の付いた棒で頭を、ガーン、てされて死んだ人に近づきマントや防具、服を剥ぎ取っていく。
「あ、肉‥‥やった」
もぐもぐ、ベルトポーチの中にあった干し肉を食べながら戦利品を死んだ人のマントで、ぎゅっ、と包む。
「今日はおわり」
後はダンジョンから無事に出るだけだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ダンジョンを出ると入口脇の松明に、ぱちぱちぱち、と火がついてて空は真っ暗になっていた。
「よー死体漁り、その様子だと今日も死んだか」
「3層で死んだ。もう1人は連れてかれた」
「女か?相手は?」
「ゴブリンが6。武器も持ってかれた、1匹は殺した」
「これで何回目だ?」
「えーと、1、2、3、4‥‥‥‥12。12」
「そうか。こりゃそろそろ掃除が必要だな。あー、めんどくせー」
ダンジョンを出てすぐに話しかけてきた大人の冒険者に指折り数えて答えると情報代に銅貨1枚をもらった。やった。
冒険者と別れた後、ダンジョン周りの松明で明るい露店通りから外れて薄暗い裏通りにある買取屋に入ると、カランカラン、と入口に垂れ下がった布に付いた鈴が鳴る。
「はい、いらっしゃ‥‥‥お前かい。それ全部か?」
「マントとこれと服以外」
店主に戦利品を包んでいたマントとベルトポーチ、血濡れたシャツ以外を渡すと嫌な顔をしながら受け取った。ズボンがしょんべんで濡れて臭いからだろうけど仕方ない。漏らして死んだやつが悪い。
「防具は結構きれいだな。靴もまぁまぁ良い。全部で大銅貨3枚と銅貨2枚だな」
「うん。また来る」
「次はもっとマシなもん持ってこい」
「わかった」
店主から受け取った金の内、銅貨を2枚だけ分けて残りをチャリーン、チャリーン、と外で聞き耳を立ててる奴らに聞こえるよう音を立てながら財布に入れ、それを早速装着したベルトポーチにしまい、服とマントは、くるくる、と丸めて肩に担ぐ。
そして買取屋を出る直前に、ぐっ!、と身体全部に力をいれて店から飛び出し、道に出た瞬間に片足を軸に身体の向きを変えて暗闇の中を全速力で駆け出した。
「あ!?くそっ!待ちやがれ!」
「逃げんなチビガキ!!」
その一瞬後に複数人の怒声と足音が、どたどた、ぎゃーぎゃー、と追いかけてくる。
声からして相手は最近やってきたばかりの孤児集団だ。確かダンジョンで稼ごうとして失敗してからは何度か派手に盗みをしてると噂になっていた。
だから
「欲しいなら、やる」
チャリン、チャリーン、と強く音が鳴るように財布に入れず持っていた銅貨2枚を後ろ手に地面に投げつける。
すると孤児集団は音に反応して一斉に足を止めて暗闇の中に転がる銅貨探し始めた。加えて他の孤児や落ちぶれた冒険者くずれなんかまで銅貨を探し始めて、その後すぐに殴り合いの喧嘩になった音が聞こえた。
「おっちゃん、肉串2本」
「あいよ、銅貨4枚な」
大銅貨1枚を渡してお釣りの銅貨6枚と肉串2本を受け取り早速、がぶり、と肉に横から噛み付き、もぐもぐ、食べる。
孤児集団を撒いて出てきた露店通りは松明に照らされて明るく、そこを歩く人達も裏通りの人間に比べると元気できれいだ。
「氷の魔法でキンッキンに冷えたビールだよー!今だけ銅貨2枚!早い者勝ちだよー!」
「聞いた話なんだけどよ。ゴブリン共がデカイ巣を作ってるらしいぜ」
「へへっ!今日も大量に残ってる」
「ちょうどいい、騒ぎに合わせて実行だ」
「ねぇお兄さん、私といい事しない?」
声を上げる客引き。酒飲んで騒ぐ冒険者。ゴミを漁る孤児。怪しい会話をする男達。耳元で囁き誘惑する女。ざわざわ、がやがや、と色んな音や声に耳を傾けながら肉串を、もぐもぐ、ごくん。
ゴミ漁りをしてる孤児が、じー、と見てくるけど無視して2本目にかぶりつく。あげないよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
主人公
名前:???
通称:死体漁り
年齢:推定7歳
容姿:灰銀色のショートヘア、薄ピンクの眼
武器:折れたツーハンデッドソード
服装:ぶかぶかの血濡れシャツ、剣帯、ベルトポーチ
たん・たん・とた・たん 十六夜冬歌@読9書1 @Touca0401
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