第3話 そらとぶヤドカリ

ねむってから どのくらいだろう……


トントン コンコン ドンドン。


ベッドよこの まどに なにかが あたる  おとで マサは めをさました。


……だれ?


すこし あけた カーテンの すきまから そとを のぞくと おばモン……ではなくて クラスメイトの リサが いて、ライトのひかりで マサの かおを てらしている。


「なに〜?」


マサは まどを すこし あけた。


「おばモンが いっぱい だよ」


リサの かみは せなか まで のびている。

まけずぎらいのリサは ときどき マサを バカにしたりする。

リサは クラスの ちゅうしんにいる おんなのこだった。


「はやく はやく」


コズエは リサの よこで てまねき している。

かみは かた くらいの ながさ。

ドライヤーで おさえようとしても ハネてしまう。


コズエは かぞくと いっしょに キャンプに いくことが おおい。

はらっぱで ポニーに のって かけまわるのが すき。

マサに ポニーの やくを させて きょうしつの なかを かけまわったことも ある。


「おそいよ〜」


イライラした こえで マキが いった。

いつも カチューシャで まえがみを あげている マキは ひろい おでこが チャームポイント。

じゅぎょうが はじまる まえ、まえの せきに すわっている マサに こえを かけて、ふりむいた マサの ほっぺたを バチンと おもいきり ビンタしたことがある。

びっくりしている マサをみて マキは ケラケラ おおわらいした。


マサは まどから ひょいと かおを だして マキが ゆびさす さきを みた。


いろいろな いろの ひかりのたまが ふわふわ うかんでいて おばけ みたい。

それが もりのなかを ふわふわ すすんでいる。


よ〜く みると……

それは からだが やきゅうボールのように まるい おばモンだった。

かれらは ホタルのように ひかり ながら まえへ まえへ すすんでいる。


かわいい モンスターのような おばモンたちも いっしょに あるいている。



マサは となりの 2だんベッドで ねている ダイキと ケータを たたきおこして いっしょに へやをでた。


ふたりは なにが なんだか わかっていない。

むにゃむにゃ ごにょごにょ いっている。


マサたちは おばモンたちの あとを こっそり ついていった。


たくさんの おばモンたちが ぞろぞろ あるいている。

ようかいの ぎょうれつ のようにも みえる。



ははおやに くっついて あるく おばモンは、ははのてを しっかり にぎりながら キョロキョロと まわりを みている。

にんげんの 5さいくらいのコに みえる 

すがたは にんげんっぽい けれど からだじゅうが きみどりいろ。

かみのけの かわりに あたまから はっぱが はえている。


そのコは うしろに いる マサたちを ジッと みたりも している。


「ねえ にんげんのコだね にんげんの!ねえ ママ!ついてきてるよ」


そのこは マサたちと なかよく なりたそうに している。

ははのてを ギュッと にぎった ままだけれど。


おばモンたちの あとに ついていって しらない みちを あるいていった。


ここは どこだろう?すっかり まいごの きもちで すすんでいくと、もりを でた。

パッと よぞらが ひろがった。

めのまえには おおきな おかが ある。

まんげつの ひかりが おかを てらしている。

なつの ススキは まだ みどりいろで、ながい はっぱが かぜに さわさわ ゆれている。

まるで うたっている みたい。


あちこちから おばモンたちが あつまってくる。


フゥ〜 ウィ〜。


へんなおとがして、まるいひかりが おかを てらした。


そらとぶ おおきな ヤドカリが そらから おりてきて ちゃくりくした。


いえ のように おおきな カイがら から 2ほんの うでと あたまが でている。


「にんげん もいるじゃんカイ。いくカイ?なつまつり!」


プシュー。


ドアが ひらいた。


カイがらの よこが おおきな ドアに なっている。


おばモンたちが てや ふくを ひっぱってくる。


「あさ はやいんだよなあ〜!あしたはさ〜!」


ケータは いきたそうな かおを しながら そういった。


けむくじゃらで かいじゅう のように おおきな かおの おばモンが ノソノソ ちかづいてきた。

ライオンのような たてがみが ある。


「おれ ムンジェラってんだ。よろしくな。すぐ もどれるよ。ねぇ〜 ポヤシュくん?」


ムンジェラは ヤドカリの ポヤシュを みた。


「もちろん!かえりたい ときは いってね。いくカイ?」


「いく〜」


エータが まっさきに カイがら のなかへ とびこんだ。


「たのしそー」


コズエは エータを おいかけるように カイがらの なかへ。


マサたちも あとに つづいた。


よぞらに とびあがったポヤシュは 30たいくらいの おばモンと マサたちを のせて スイスイと およぐように よぞらを とんだ。





カイがらの ドアが ひらいた。


はらっぱの うえに たった マサは よぞらを みあげた。

あっちこっちから そらとぶ バスや くるま じてんしゃ ふねが よぞらを とんでくる。

そらとぶ のりものたちだ。



もりのなかの ひろばには ステージが あった。


ステージのうえには たいこを たたきながら おどる ハニワが 12たい いる。

フランスパンを はんぶんに きったような ひょろながい からだ。

あしは ない。

ゆびも ない。

2ほんの うでが くっついている。


ハニワたちの はだのいろは、いろえんぴつ のように ピンク あお みどり きいろ むらさき などなど いろいろ だった。



ステージのまえには テーブルが たくさん ならんでいて、おかしを たべたり ジュースを のんだり している おばモンが たくさん いる。


ハニワの そんちょう テケテン・テッテが はなしはじめた。


「すごーく ひさしぶりに あえました!この ほうせきに!コロちゃん ひさしぶり〜!」


テケテン・テッテは カバンのなかから ちきゅう のように あおく ひかる まんまるの ほうせき〈ゆめのコハクだま〉を だして なでた。


あおいひかりが どんどん つよくなった。


ハニワたちは くうちゅうに とびあがって、おばけの ように ふわふわ そらを とんでいる。


ハニワたちは コハクだまと たいこを そらに うかべて いっしょに おどるように とびまわった。


ドンドコ ドンドコ ドンドンドン。


コハクだまから でてくる あおいひかりが みんなの かおを てらしている。


ドン ドコドコドコ ドン ドコドコドコ ドンドンドン。


ハニワたちは そらに うかんだまま わを つくった。

そのまんなかに コハクだまが ある。


ドンドンドン ドンドンドン。


ハニワたちは うたっている おどっている。


あおいひかりは どんどん つよくなる。


マサたちも おばモンたちと いっしょに おどった。






ふたりぐみの ゴブリンが よぞらに うかんで なつまつりを とおくから みている。

からだのいろは おとこのほうが あおくて おんなのほうが ピンクいろ。

せなかには ひかりで つくられた むらさきいろの つばさが ある。


ふたりの ちかくを 1わの むらさきいろの フクロウが とんでいる。


ふたりは フクロウ そっくりの つばさを つけている。


「うっとりしちゃうわー!わたしのものに したーい」


ピンクいろのゴブリンは りょうてを あわせて めを キラキラさせた。


「ぬすんじゃうホー!ホーホー!」


フクロウは ホーホー ないている。


「そうだな!きみのために〜!」


あおいゴブリンは ピンクいろの ゴブリンを みて ほほえんだ。


「ありがと〜!ダーリン!」


ピンクいろのゴブリンは あおいゴブリンの くちびるに キスを した。


「あいしてるぜ〜!」


「わたしもよ〜!」







なつまつりが おわった もりのなかの ひろばは しーんと しずかに なっている。

ハニワたちは コハクだまを カバンにしまって よぞらに とびあがった。


いきさきは ハニワむら。


こっそりと ついていった ゴブリンたちは ハニワむらの きの たかい ところにある えだに すわって ハニワたちが ねむるのを じっと まった。





ゴブリンたちが えだ から よぞらに とびあがった。


ストン。


むらのひろばに ちゃくち した。


せなかに あった むらさきいろの ひかりのつばさが きえた。


バキンッ!


まほうで そうこの カギを こわした。


おもったよりも おおきな おとがした。


そうこの なかには キラキラと あおく ひかる〈ゆめのコハクだま〉が あった。

だいの うえに おかれている。


「わたしのものね〜」


コハクだまを もちあげた ピンクいろのゴブリンの かおが あおいひかりに てらされた。

めは ハートになっている。

かがみ のような ひとみには コハクだまが うつっている。




せなかに むらさきいろの つばさが あらわれた ゴブリンたちは とびあがった。



よぞらに かれらの わらいごえが ひびいた。

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