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私は今持っている服や化粧品を一掃するんじゃないかと思うほど爆買いをした。


晴澄は重たい荷物を率先して持ってくれたのに、

自分の買い物も楽しんでいて、

そんな晴澄の新しい一面を知れることはとても嬉しいと思った。


楽しい。楽しいな。



“つまらない話をする相手が悪いんですよ”



…随分前の話になる。

マッチングアプリで知り合った男の人と会っているところを、晴澄に見られていたのは。


今思えば、あの光景を見られていたのは…少し恥ずかしい。



“気にすることないです”



あんな風に言ってくれる人と、今隣で出掛けてるなんて不思議な気分だ。



こだまで夜ご飯を食べようと帰りの電車を2人で待っている時、晴澄の隣に立って唐突に思った。


「今更だけど晴澄って彼女いないよね?」


2人で出かけている感覚を思い出した時に、知ってて当たり前のことを聞けていないことに気づいた。


恋人がいるのに女の人と2人で出かけるような人ではないことはわかっているけど、

この見た目と性格で恋人がいないのも不思議に思えてしまう。


「いないですよ。突然どうしたんですか?」


「いや聞いたことなかったし、なんか…晴澄といると楽しいから」


「………」


「人付き合い…たくさんしてきたんだろうなって」



オブラートに包んだつもりが、なんとなく不自然な言葉になってしまう。


だって…恋人でもないのに、晴澄といることが楽しいことが不安だと思うと伝えるのは、あまりに烏滸がましいような気がして。



「今はいないです。ただ学生時代はそれなりに」


「そう、だよね」


至極普通のことだ。

多分1番求めているであろう回答だったと思う。


だからこそ、あえて聞いてしまった自分を恥ずかしいとも思う。


そんな私に気づいてか、晴澄は少し考えて、思い出すように視線を上に向けながら話す。


「よくある話かもしれないですけど、当時付き合ってた人とは俺が上京して遠距離になって、そのまま寂しい…とか、まぁ現実的に難しくて別れました。それからは全くですね。一人暮らしとかバイトとか、学校の課題も忙しかったですし、恋愛してる場合じゃなかったというか。専門は男子の方が多かったから、それも楽しくて」



私は…調理の専門に行っていた当時の晴澄を、あまりよく思い出せない。


声も聞いたことがなかったあの頃の晴澄は、一体どんな気持ちで毎日を過ごしていたのだろう。


寂しい…と思っていたのは彼女なのか、それとも晴澄の方なのか。

そんなことすら上手く聞けない私はとても臆病だと思った。



「もっと早く知っておけばよかったな、晴澄のこと」


「ふっ、本当にどうしたんですか急に」


「だって早く知れたら…多分私はもっと人を大切にできる人だったかもしれないって思うから。晴澄がいつも…周りの人にそうしているように」


「………」



今こんなふうに笑顔で自分の想いを伝えられるのは晴澄がそばにいてくれたからだ。



ずっと“この人のようになりたい”と、切に願ってきた。


憧れより優ってしまった嫉妬心を、もっと早く拭い去れていたのなら、

あなたが苦しいと思っていた瞬間に寄り添える時間があったかもしれない。



そうやって、これからも、私は…後悔を繰り返すんだろうか。



「俺は…」



晴澄が口を開いた瞬間、待っていた電車の到着を知らせるチャイムが鳴った。


その続きを聞きたかったけど、晴澄が口を閉ざしたからどうしてか聞けなかった。


電車の中では他愛ない話をした。

今日が終わってしまうのが切ない。

今度はいつこんな風に晴澄と会えるだろう。


晴澄は私が悩んでいる時や弱っている時に、

いつも優しくしてくれるけど、

じゃあ元気な時は…?


なんでもない時も、同じように笑いかけてくれるだろうか。



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