第6話 特別枠
パッと目測しては30階あるだろうか。金井は内心、仰天していた。
「もしかして、ここに?」
「ええ!正に」
(なんて人。さっきまでは近くなったアカネさんが一瞬で遠くなった気がする。一体何をしていた人なんだろう)
疑問に思う金井を横にアカネは無用心に手を引いて入り口へ向かう。専用のカードキーで自動ドアを解除して広いラウンジを颯爽と抜けていく。直視できなかったが、内装は高級ホテルと変わらない。受付所もあり人がいた気がする。エレベーターに乗り28の丸ボタンをアカネは押した。
「あ、あの、アカネさんって一体」
「ん?ああ、そういえばまだ詳しく自己紹介してなかったね。私は1年前まではアメリカの特殊部隊にいたの。それも特別枠のね」
「特別枠?」
「うーん。具体的には一般人から招集された枠」
「一般人から?」
「そう、一般人から。特殊部隊は本来なら正式に陸軍や海軍を経て声が掛かるけど、私は何も経ずに入隊できた。つまり、ただのアルバイトから飛び級でアメリカ軍の特殊部隊、それも極秘の任務に当たる少数精鋭隊」
「ええええ。本当にそんなことが?」
「本当だよ。このマンションと私の身体が何よりの証拠」
「………」
「で、一般人から特殊部隊に入ったのは私と私の姉だけ。10人いる少数精鋭隊員達から唯一2人が直前まで一般人だった。っていう感じかな?ちょっと難しいかな?」
「い、いえ。何となく理解できました。………お姉さん、いたんですね」
「まあね。今は北極でとある研究に携わっているから日本にはいないんだけどね」
「研究者なんですか?」
「いや、冒険家」
「それってもう一般人という範疇超えてるじないですか」
「ふふふ。確かに」
話に夢中になっているとポンと音が鳴った。28階へ到達したのだ。
「それじゃ、私の部屋へご案内致します」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます