祭りの日

『リーゼ様から頂いた髪飾りはつけないのですか』サクラが髪を結いながら言った。

「祭りの会場は人ごみでしょう。無くしたら困るから」ナギが答えるとサクラは髪飾りを使わず綺麗に髪を結いあげた。用意が出来るとナギは姿見で確認した。

『下に降りてカイのお迎えを待ちましょう』とサクラは声をかけた。


一階に降りると

「あら、とても綺麗、サクラが髪ゆったの?」

『ええ、上手でしょ!』

「よく似合ってるわ」二人の声にナギは少し恥ずかしくなった。


暫くするとカイと人型のリーフが入ってきた。

「用意できましたか?出かけましょうかお嬢様」

そう言うとナギの手を取った。

「行っておいで」

「行ってきます!」ナギは明るく答えた


外に出ると馬車が用意されていた。リーフが御者を務め残りの三人は馬車に乗り込んだ。馬車は会場への道をひた走る。ナギは景色を楽しんだ。

会場の馬車置き場に着くと、リーフがドアを開けた。三人が降りカイはナギの手を取って歩き始めた。リーフとサクラがそれに続いた。


会場は去年同様賑わっていた。ナギはお店を見て回った。綺麗なものがいっぱい。今年は通貨を持っている。何を買おうかと一つ一つ熱心に見て回った。

お昼近くになって、

「ナギ、疲れただろう。お昼買ってくるから、リーフ、サクラとあそこで待ってて」と言ってテーブルとベンチのある木陰を指さした。

「解った」三人は指定されたところに座った。暫くしてカイが戻ってきた。

「さあ、どうぞ」カイはテーブルに四人分の布に包まれた食事を置いた。

「いただきます」ナギは包みを軽く開くとかぶりついた。

「おいしい。故郷のハンバーガーを思い出すわ」

「ハンバーガー?」

「ええ、パンの間に肉や野菜などをはさんで食べるの。よく似てるわ」

「そうなんだ。この国では外出する時の携帯食としてよく食べられているんだよ」

「考えることは同じなのね」

四人は談笑しながら食事をした。食事が終わるとカイは海の見えるベンチにナギを誘った。リーフと、サクラは離れたところから二人を見守った。


暫くしてカイが

「ナギ、俺のことどう思ってる?俺、ナギがここに来てからずっと見守ってきた。これからもずっと一緒に居たい。ダメかな?」カイはまっすぐナギを見つめて言った。

ナギもじっと見つめ返しながら

「嬉しいわ。私ここに来てからカイがいなかったら耐えられなかったと思う。私もずっと一緒に居たい」と答えた。

「ありがとう」そうカイはナギの肩を抱き寄せた。暫くそうしていたが、

「ねぇ、ナギ、君の国ではずっと一緒にいる誓いをした時に何か贈るの?」

「おそろいの指輪を左手の薬指にはめるのよ」

「じゃ!買いに行こうよ!」

「賛成!!」二人は立ち上がると露店の方に歩いて行った。リーフとサクラが慌てて後を追う。


貴金属の露店の前で二人は止まった。

「いらっしゃい何をお探しで」

「お互いの左手の薬指にはめるおそろいの指輪が欲しいのだが、普段に使うからあまり飾りのないものがいい」

「それならこれはどうです?」露店の主人は箱に入った指輪を出した。

「はめてみて下さい、大きさは調節しますから」そう言われカイはナギにナギはカイに指輪をはめた。

「え!ピッタリ!」

「本当だ!これ貰うよ」カイは店主に料金を払った。

「あなた方に幸運が訪れますように」店主は笑顔でそう答えた。


「さて後は、ナギ何か欲しいものは無いかな?」

「この指輪だけで十分よ。エマにお土産買っていきたんだけど、もう少し上の方で前掛け売ってたのよね」

ナギとカイは手を取りながら歩いて行った。目当てのお店を見つけるとエマに似合いそうな前掛けをナギは自分のお金で払った。

「さて、後は果物でも買って帰りましょう」カイは果物を買い求め四人は馬車で家へと帰った。


「お帰り楽しかったかい」

「ええ、エマこれお土産」ナギは前掛けを渡した。

「私にかい、嬉しいね。ありがとう。夕食の支度で来てるよ。カイも食べていくだろう」

「はい、頂きます」

「着替えてきますね」ナギとサクラは二階へと上がって行った。


ナギが戻ってくると三人は夕飯を囲み今日の事をエマに話した。


「また来るよ」食事が済むととカイは名残惜しそうに帰って行った。




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