第19話 異世界の商人アルメンドラ
探索は順調に進み、第二十五階層にたどり着いた。
「瞬様、梨香様また敵です」
背後からアリエルが注意を促す。
僕たちの前方に何者かが近づいてくる。
それは青い肌をして、鹿の角を持つ異形の存在であった。身長はおおよそニメートルと巨大だ。
虚ろな黒い瞳でこちらを見ている。
「あれは
アリエルが敵の特徴を手短に伝える。
鷹城玲奈が弓の構えをとる。
見えない弓に五本もの
びゅっという激しい音とともに
「
どうやらアリエルの言う通り、魔法は効きにくいようだ。
「これなら!!」
豹塚瑠璃が飛び出す。
僕の視界から豹塚瑠璃は消えた。
実際は音速で動いているためにみえないだけだ。
次にあらわれたとき、豹塚瑠璃は
そのまま角のある悪魔の背中に飛び乗り、豹塚瑠璃は
刃は半ばまでつきささる。
青い鮮血が飛び散る。
「グウアアッ!!」
豹塚瑠璃は
よし、これはチャンスだ。
僕はスキル特攻を発動させる。
低く腰を落とし、抜刀したカシナートの剣を上段に構える。
暴れる
角のある悪魔の右肩口にカシナートの剣が深くささる。僕はさらに力を込めてカシナートの剣を斜め下に降ろす。
角のある悪魔は内臓を撒き散らしながら地面に倒れた。口から大量の青黒い血をはいて、角のある悪魔は倒れた。
煙をたてて悪魔は神霊石に変化する。
「これは悪魔の角ですね」
アリエルは僕に言う。
「なんやそれ」
母さんがアリエルにそう聞いた。
「稀に敵クリーチャーは素材を落としていきます。この悪魔の角もその一つです」
アリエルが母さんにそう説明した。
僕もそれは聞いたことがある。
ダンジョンのモンスターは稀に神霊石とは他に素材とよばれるものをドロップしていく。
その素材を使いいろいろな特殊アイテムを製造することができる。
豹塚瑠璃が着ている
その素材をバルバロッサで売ればかなりの金額になる。またバルバロッサで頼めばなんらかのアイテムに加工してくれる。
鷹城玲奈に聞いたのだが、バルバロッサにはダンジョンでドロップしたアイテムを加工する専門の職人を抱えているということど。
たしかドワーフの工房と言われていたな。
「じゃあとりあえず保管としきますわね」
悪魔の角の大きさは両手からはみ出すほとだ。鷹城玲奈はそれを拾うと胸の谷間の奥の亜空間にしまった。まるで四次元ポケットだ。
僕たちはさらに探索をつづける。
道をいったり着たりしながら、見つけた部屋を手当たり次第にあけていく。
そして僕たちはとある部屋でバベルの塔で始めてモンスター以外のモノに出会った。
そいつは石の部屋にペルシア絨毯をひき、座っていた。背中には巨大なクッションがあり、彼女はそれにもたれていた。
「あら、お客さまかしら」
まさに鈴がなる美声であった。
そうその人物は女性であった。
褐色の肌をした豊かなスタイルの女性だ。胸の大きさだけなら鷹城玲奈といい勝負た。極彩色の布を胸と腰にだけ巻きつけている。
ウェーブのかかった茶色い髪をなびかせて立ち上がる。
ゆっくりと僕たちの前に歩いてくる。
僕は警戒をとかずに彼女を注視する。
こんなところに人が居るなんて怪しすぎる。
「なんでこんなところに人がおるん」
母さんが疑問の声を漏らす。
「お母さん、気をつけて」
黒豹のサーベルの柄に手を当てたまま、豹塚瑠璃は前方に立つ。
「警戒をお解きください。私は異世界カナンの商人でアルメンドラと申します」
アルメンドラと名乗る褐色の肌のグラマー美女は深く頭を下げる。
「お久しぶりです、アルメンドラさん。あなたもこちら側にこられたのですね」
アリエルがワンピースの裾を両手でちょこんと持ち、挨拶する。
我が姪ながら可愛らしい仕草だ。
どうやらこの褐色グラマー美女はアリエルの知り合いのようだ。
「アリエルさんのお知りあいですか?」
警戒をといて
「はい。アルメンドラさんはお父様と同じパーティーにいらした方です。商人として勇者を支えたお方なのです」
アリエルはアルメンドラをそう紹介した。
なるほこのアルメンドラという女性は和馬兄さんやあのエルフ美女のアリエスの仲間ということか。
和馬兄さんのまわりには美人が多くて羨ましい。
いや、僕のまわりにも今は鷹城玲奈と豹塚瑠璃というタイプの違う美人がいるか。
バベルの塔が生える前では信じられない話だ。
母さんは若返って可愛くはなったがそれはノーカウントだ。
異世界の商人アルメンドラは僕ににこやかに微笑みかける。営業スマイルとしても美しい笑みだ。この商人からなら多少高くても買い物をしてしまいそうだ。
「どうやら悪魔の角をお持ちのようですね。お近づきの印に
アルメンドラにそう提案された、
「良いんじゃないの。素材をバルバロッサにもっていってもアイテムにできるかどうかわからないしね。仮にできたとしても何ヶ月待ちなんてのはざらだからね」
鑑定士でもある鷹城玲奈がそう解説する。
「ボクもそれに賛成。ダンジョンでドロップした素材をアイテム化できるいわゆる錬金術師ってのは希少なのよね」
豹塚瑠璃は賛成した。
僕は冒険者歴が長い彼女らの意見を採用した。
母さんはわかせるわと言っていた。
僕は手に入れたばかりの悪魔の角をアルメンドラに手渡す。その時僕はアルメンドラの両手のひらに複雑な紋様の魔法陣が刻まれているのを見た。
アルメンドラはその悪魔の角を両手で受け取る。
「すぐに加工いたします」
アルメンドラがそう言ったあと彼女の手のひらは淡く輝く。
「まさか錬金術師の生成をこの目で見れるなんて」
鷹城玲奈は感嘆の声をあげる。
悪魔の角をぐにゃりと変形し、オカリナの形となった。
「名付けてアルメンドラの笛。この笛を吹けば私はいつでも駆けつけます。とはいえ私は商人故に戦闘は専門外です。ご相談はその他でお願いいたします。またご依頼の報酬としてマナストーンをいくつかいただきます。それも商人故御容赦をお願いいたします。それでは皆さまご武運を……」
アルメンドラは言うだけ言うと彼女の足元に刻まれた魔法陣の中に消えていった。
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