君に捧げるいくつもの愛

一色冷凪

始まり


湊「もうこんな時間か…悪いな、遅くまで残らせて」

翔也「いいんだよ。俺らも夏休み終わる前に文化祭について話し合いたかったしな」

詩織「一部だけでも六時くらいまで集まれてよかったよね」

茜「生徒会ってこんな時も仕事なんだね。いつもありがと、生徒かいちょー」

湊「あはは、まあ夏の風物詩みたいなもんだし、今年は知り合いばかりだから例年より気が楽だったよ」

詩織「もう外暗いね。他のメンバーが先に帰った時は明るかったのに」

翔也「俺らも早く帰らねえとな」

香帆「茜~!詩織~!仕事終わった?」

詩織「香帆ちゃん!ちょうど今終わったよ。」

翔也「こんなに遅くまでやってたのかよ。さすが剣道部は全国控えてるだけあるな」

香帆「まあね~この学校の誇り?みたいなもんだし」

茜「香帆だけじゃないでしょ。早く着替えないと風邪ひくよ」

香帆「あ!そうだった。帰る約束したかったから急いできちゃった。着替えてくるからここで待っててよ~?」


   香帆が下手から出ていく


翔也 相変わらず嵐のような奴だな

詩織 そこが香帆ちゃんのいいところだよね

湊   話しているところ悪いんだが、誰か職員室に行ってこのプリント渡してきてくれないか?今のうちに生徒会のプリントをまとめておきたいんだ

翔也 もう最終下校時刻だぞ。生徒会長が校則破ってどうすんだよ

湊   お前が話し合い中に雑談しなければもっと早くに終わってた。

詩織 じゃあ私が行ってくるよ。茜ちゃんたちはここで待ってて

翔也 俺も行っていい?職員室前の忘れ物棚見に行きたいんだよね

詩織 何か学校に忘れたの?

翔也 教科書に挟むクリップを夏休み前に忘れたんだよ。教室探してもないからもしかしたらなって

湊   ついでに先生たちに渡したお菓子のお土産。感想を聞いてきてくれ

翔也 わかった。それと湊、もっと積極的に行動しないと茜さん他の奴に取られるぞ。夏休みにどっか誘えよな

湊   ああ、頭の片隅に置いておく

翔也 頭のど真ん中に置いておけ

詩織 じゃあ香帆ちゃん帰ってくる前に早く行こうか

翔也 そうだな。じゃあ行ってくるわ


    詩織と翔也が下手から出ていく


茜   待ってる間暇だし、私も手伝うよ。あ、極秘内容だったりする…?

湊   そんな重要な内容じゃないし、すぐ終わる内容なんだけど…お願いしてもいい?


    約十分後 香帆が下手から登場


香帆 ただいま~ってあれ?詩織たちは?

茜   おかえり、二人は職員室に行ったよ

香帆 そっか~ていうかまだ仕事やってんの?いっけないんだ~生徒会長が校則破ってやんの~

湊   その台詞、翔也も言ってたぞ。お前ら無駄に似ているな

香帆 私、兄弟よりも姉妹がほしい!

茜   ツッコミどころはそこなのね


    下手から翔也が勢いよく入ってくる


翔也 お前ら早く逃げろ!

茜   わ!びっくりした。いきなりどうしたの?ってあれ、詩織は?

翔也 いいから早く外に出るぞ!ここも危ない!

湊   詩織さん一人残してきたのか?何してんだよ…

翔也 そんなこと言ってる場合じゃねえんだよ!いいから!


    翔也が湊の腕を引っ張る 湊がそれを振りほどく


湊   やめろ!何があったんだ。ちゃんと説明してくれ

翔也 説明してからじゃ遅いんだ!いいから!


ドアが開いていることに気づく 鍵をかける

ドンドンとドアを叩く音がする


茜   そんなことしたら詩織が入れないじゃない

香帆 一人置いて行かれた上、鍵も閉められて怒ってるんじゃない?早く開けよう

翔也 バカ!開けるな!


       香帆がドアを開けようとする 湊が静止する ドアを叩く音が鳴り続ける


湊   待ってくれ、翔也の話も聞いてやってくれないか?翔也がここまで慌てたのは滅多にない

茜   まあ確かに…聞くだけ聞こうよ

香帆 茜が言うなら…

湊   翔也、ドアの鍵はかかっている。誰も入ってこない。だから落ち着いて話してくれ。お前は何から逃げてきたんだ?

翔也 …お前も知ってる通り、忘れ物棚は職員室の近くにある。先にクリップ探して来なよって言われたから俺は棚の方に行った

湊   ああ、それで?

翔也 いくら探しても見つからなくて誰かに盗まれたのかと思いながら彼女の方を振り向いた。ちょうどドアを開けるところだった。彼女がドアを開けたとき、先生たちが、一気に出てきたんだ

香帆 一気に?ちょうど帰るとこだったの?

茜   それにしては不自然だよ。見回りの先生もいるはずだし…

翔也 信じ難い話なんだが、出てきた先生たちは、その、ゾンビみたいな顔だったんだ…

香帆 …まんがの読みすぎじゃない?

翔也 違う!彼女は先生たちに囲まれてそのあと、彼女も、ゾンビみたいに…

茜   ゾンビって…きっと疲れているんだよ

翔也 じゃあさっきから鳴り続いているドアを叩く音はなんだよ!普通ありえないって


       ドアを叩く音が止む


湊   止まった…?

香帆 ほら、詩織も私らの話聞いてやりすぎたなって思ったんだよ。それか叩きすぎて手痛めたか。ほら帰ろ。みんなで帰れば怖くないって~

翔也 バカ!閉めろ!


       香帆がドア(下手)を開けようとする 詩織が手を伸ばす


詩織  アアアアア

香帆  …え?しお…


       湊が思い切りドアを閉め鍵をかける 香帆は床に尻もちする


茜   香帆!湊くん!大丈夫!?

翔也 怪我は?

湊   何とか、でもこれで、冗談じゃなくなった

茜   香帆、大丈夫?

香帆 今の姿、詩織だった…どういうこと?さっきの話はほんとなの?

翔也 だからそうだって言っただろ!

湊   本当に、映画に出てくるゾンビみたいだったな

香帆 詩織がゾンビに…じゃあ外に出たら…

茜   翔也くんの話から考えるとゾンビに感染していく可能性が高いね…

湊   そう考えるのが妥当だな

翔也 警察に連絡しよう。それでここまで迎えに来てもらおう!

茜   ごめん、昨日充電するの忘れちゃって…

湊   生徒会のパソコンが壊れた代わりに今日の会議で使ったからな…俺も充電がない

茜   香帆はどう?充電

香帆 学校に来た時点にはもうすでにないよ…

翔也 全員そうだよな…

湊   パソコンが壊れたりしなかったらよかったんだけどな…

茜   自力で三階から下に降りるしかないってこと?

翔也 そうなるけどどうやって降りる?

湊   待ってくれ。こんな時こそ情報を整理しないと。翔也、彼女はどうやってゾンビになったか覚えているか?

翔也 先生たちに囲まれて…悲鳴を上げていた。確か、痛いって言ってた

香帆 詩織がそんな状況だったのにアンタ、走って逃げてきたの?

翔也 ちがっ…いや、うん逃げてきた。頭で考えるより先にその場から離れないとって思って気がついたら戻ってきていた

茜   誰だってそんな状況になったらそうなるよ。翔也くんのせいじゃない

湊   痛いか…映画みたいな噛まれて感染していくってことか?

茜   映画と言えば歩行速度はどうだった?ほら、稀に速いゾンビもいるじゃない

翔也 必死だったからあんまり覚えてないけど、多分遅かった

湊   炎や太陽に弱いイメージもあるよな。もし移動するなら理科室だな

翔也 …どうしたんだ?さっきから元気がない

香帆 逆に何でみんなそんなに冷静なの?ゾンビなんて、映画じゃあるまいし、きっと悪い夢なんだよ。起きたらきっと詩織も元に…

茜   私も怖い、けど、詩織の姿もゾンビだったし、げ、現実を見なくちゃ

香帆 …ごめん、茜だって怖いよね…

翔也 …悪かった。俺がもう少し冷静に話していたらお前も…

香帆 やめてよ、悪いのは素直に信じなかった私の方なんだから

湊   謝るのは後でいい。今はゾンビの弱点であろうものを探すこととどうやってここから脱出するかだ

茜   そう、だよね。湊くんの言う通りだ

翔也 そういえば湊、さっき俺が『先生たちが一気に出てきた』って言ったよな

湊   ああ、それがどうした?

翔也 一気に出てきたっていうより、ドアの前に元からいて流れ出てきたような気がして…

湊   元から…?

翔也 俺の勘違いかもしれないんだ。ただ、ちょっと不自然に思ったから

香帆 ドアを開けることもできないほど体が動かないとか?

茜   それよりも知性がないんじゃ…?

湊   なら外に出ない限り襲われる可能性はないな

香帆 でもたかが憶測なんだしどうなるかわからないよ。ゾンビの数が増えたらドアを開けられるかもしれないし

翔也 なら理科室に移動しよう。湊、お前も言ってただろ?移動するならそこがいいって

茜   ここのドアの前には詩織がいるんだよ?そんな簡単に移動できないよ

翔也 でも理科室ならドアはスライド式で分厚い。それにもし炎を使ったとしても他の部屋に燃え移ることはない

湊   ああ、それが一番いいな。みんなはどうだ?

茜   うん、それが全員生き残る道なら

香帆 私も!もう弱音は吐かない!

翔也 決定だな

茜   それで、どうするの?その、詩織

湊   とりあえずヘルメットを被ろう。人数分はある

翔也 今んところ他に使えるのはお前の竹刀だけか

香帆 で、できれば先頭には立ちたくないかな…

湊   掃除道具しかないな…まあ、ないよりマシか?

茜   それなら私折り畳み傘あるよ。最大まで伸ばしたら何とかなる、かも

翔也 消火器あったぞ。目くらましに使えるんじゃないか?

湊   何かあったときは投げればいいからな。持っていこう

香帆 ねえ、カバンはどうするの?

湊   おいていこう。カバンを掴まれたら終わりだ。夜が明けたら取りに戻ろう

茜   湊くん、理科室までの一本道で、決断した後に怯えるのもあれだけど、もし、逃げられない状況になったら、どうする?

湊   …大丈夫、理科室までの間に教室はたくさんある。いざとなったら入ろう。理科室に行くことが最優先なんじゃない。みんなで朝を迎えることが最優先だ

翔也 湊の言う通りだ。そんな状況になったらまた新しい作戦を考えればいい。

茜   …そうだよね。ごめんね、せっかく香帆が弱音吐かないって言ってたのに

香帆 茜…弱音吐くのは悪いことじゃないよ。じゃあこうしよう!茜が弱音吐いたら私が励ます!私が弱音吐いたら茜が励ます!それで行こう!

茜   香帆…ありがとう

翔也 絶対生き残ってやろう

湊   ああ。じゃあみんな、準備はいいか?俺が最前を走る。みんなはついてきてくれ

翔也 俺は一番後ろにいるよ。女子たちは全力のスピードで湊についていけ

湊   翔也、任せたぞ

翔也 任しとけ、親友!


     翔也がドア(下手)を開け湊がモップで詩織の侵入を防ごうとするがいない 理科室に走る


湊   いない…どこに行った?

翔也 湊!いつ出てくるかわからねえ!今のうちに走れ!

湊   ああ、みんな、走るぞ!

茜   詩織、どこに行ったんだろう

香帆 茜、今は詩織より逃げること!ほら走って!

湊   変だな、全然ゾンビがいない

茜   もうすぐ、もうすぐ理科室だ!


      詩織が階段(斜め下)から飛び出してくる


茜  香帆!横!

翔也 離れろ!

香帆 いやっ!離して!詩織!

茜   香帆!詩織、香帆を離して!

湊   一気にゾンビが増えてきた…早く!

茜   香帆が、香帆が詩織に…

香帆 いや、ゾンビになんてなりたくない…茜!助けて!

翔也 助けに入れば君も…

茜   いや!香帆!

翔也 ああクソ!ほら!走るよ!

湊   早く!増えてきている!

香帆 待ってよ、おいていかないで!

詩織 アアアアアア

香帆 いやだ、やめてぇぇ!


      理科室に着く 先に入っていた湊がドアを閉める


湊   はあ、はあ、翔也、茜さん無事か?

翔也 何とかな。でも…

茜   香帆が…私…

翔也 …湊、奥の部屋にゾンビがいないか確認してくる

湊   いや、それなら二人は休んでてくれ。俺の方が体力は残っている

翔也 …わかった。頼んだ


      湊が上手へ退場


茜   私は…香帆を…

翔也 気にしなくていい。俺が無理やりしたことなんだ

茜   詩織がゾンビになったって聞いた時、詩織を目の前にしてもあんまり実感がなかったの。でも、実際に香帆があんなことになって、私…

翔也 いいから落ち着け。深呼吸をして


        湊が上手から登場


翔也 湊、どうだった

湊   ゾンビはいなかった。けどその代わりにこんなものが…

翔也 何だ?それは

湊   理科室に置いてあるものにしては珍しく瓶の種類が違ったから何の薬品だろうと見てみたんだ

翔也 瓶の種類が違う?うちの学校は基本統一されているはずだろ?

湊   ああ、お前も見てみろ

翔也 …こ、れは…どういうことだよ。この製造会社、父さんの会社じゃないか

湊   その薬品の近くにこんな紙も置いてあったんだ。ゾンビについて細かく記されている。

翔也 まるで、俺の父さんが人間をゾンビにする計画を立てていたみたいじゃないか

湊   俺はお前も親父さんもを信じている。だが百パーセント信じているわけではない。もしお前が何か知っているなら話してほしい

翔也 知らない…知らない、俺は知らない!

湊   本当に親父さんから何か聞いていないのか?

翔也 そんなこと知っていたら最初に職員室なんか行ってない!学校にも来ていない!

湊   だよな…悪いな急にこんなこと。馬鹿だな、俺。一瞬でもお前を疑った

翔也 …いやいいんだ。俺の方こそ何も知らなくで…女子二人も犠牲にした

湊   何言ってんだ。誰しもお前の状況になったら同じ行動をする。

茜   本当に…?

湊   茜さん?

茜   本当に何も知らなかったの?

翔也 急に何言って…

茜   詩織も、香帆も、翔也くんと一緒にいてあんなことになっちゃったんだよ?

翔也 それは…

茜   それにそんな紙も、薬品も、普通の人に用意できるわけないじゃない。瓶の種類が違うことだって…本当はお父さんに言われて学校に持ってきたんじゃないの?

翔也 何言ってるんだ!俺は本当に知らないんだって!

茜   じゃあなんで香帆が襲われた時すぐに見捨てたの!?

翔也 あのままじゃキミだって危なかった!彼女はもう詩織さんにがっちり捕まっていた

茜   だったとしても…少しは助けようとする素振りをしてくれたっていいじゃない!

翔也 その少しで俺たちが危ない目になったかもしれなかったんだぞ!?

湊   二人とも!落ち着け!

翔也 だけどよ湊…

湊   茜さん、奥の部屋で翔也と二人で話してきてもいいかな?鍵も閉めたしここにゾンビは入ってこないから


     上手から出ていく、下手から登場


翔也  本当なんだ。俺は何も知らない。茜さんは状況が状況だから混乱しているんだ。湊なら信じてくれるよな?

湊    …ああ、信じるに決まっているだろ?

翔也  だよな…お前が一緒で心強いよ

湊   ああ、俺も、お前には感謝してるよ。

翔也 それで、これからどうする?茜さんの精神は不安定だ。移動はもう無理だ

湊   そうだな…ひとまずアルコールランプを探そう。いつでも火がつけれるように

翔也 ゾンビが部屋に入ってきたら大変だもんな。それがいい

湊   翔也、お前はいつも、俺の肯定してくれたな

翔也 当たり前だろ?お前の判断が間違っていなかった時なんてなかった

湊   そうか。ならこの行動も許してくれるよな?


    湊が窓を開けゆっくり翔也を見る


湊   これが俺の選択だ。わかってくれるよな?

翔也 湊!何してんだ!早く閉めろ!

湊   今まで疑問に思ったことはなかったか?どうして知能のないゾンビが俺が通った後階段から飛び出してきたか。偶然良く昨日に生徒会のパソコンが壊れたのか。

翔也 何、言ってんだよ。そんなのまるで、全部お前が仕組んでたみたいじゃねえか

湊   ああ、そうだよ。なんだ、わかっているんじゃないか

翔也 いや、笑えないって…お前が、そんなこと…誰かに強制されて仕方なくやったんだろ?なあ、そう言えよ

湊   いいや、全部俺が仕組んだよ。お前の家から瓶を盗み製造会社をお前の父親の会社にしたのも、お前を最初に職員室に向かわせたのも、俺が率先してお前たちの先頭を走りお前を後ろに走らせたのも、全部俺が一から考えて計画した物語だ

翔也 物語?お前は、何を言って…そういえば、俺が職員室から帰った時、お前は俺に『何を見たんだ?』と言ったな。普通なら『何があったんだ』と尋ねる場面で、お前は…!

湊   危なかったよ。失言をしてしまった。みんなにバレないかひやひやしたよ

翔也 下手すれば茜さんがゾンビになっていたかもしれないんだぞ!茜さんが好きなんじゃなかったのか…?

湊   茜さんは好きだよ、人としても異性としても。でも本気で恋をしたことのない俺はわからなかったんだ。どうすれば彼女が俺を見てくれるか、どうすれば俺を頼りにして俺だけを見てくれるのか

翔也 考えた結果がこれってわけかよ…

湊   自分も死ぬかもしれない、ゾンビになるかもしれない、そんなおぞましい経験を共に体験した俺だけが彼女の唯一の理解者になれると思わないか?

翔也  ふざけるなよ、そんなことしなくたって茜さんは…お前のことが好きだったよ…

湊   ああ、知っている。俺がどれだけ彼女を見てきたと思っているんだ


      窓から離れて話を続ける


湊   これでお前の質問の答えは終わった。次は俺の番だ。俺と彼女の恋に協力してくれるか?

翔也 …あの二人は俺が殺したようなもんだ。それにお前は腐っても俺の親友だ。共犯になってやるよ

湊   ありがとう、翔也。約束してくれ。絶対に今回の事件のことを誰にもばらさないと

翔也 お前も頼んだぜ。刑務所には入りたくない

湊   安心しろ。お前の未来はそんなことにならない

翔也 恐ろしい奴だとわかってもお前の言葉にはなぜか説得力があるな。


    翔也が窓から入ってくるゾンビに気づく


翔也 湊!ゾンビだ!火を探せ!

湊   お前の大声で集まってきたんだ。予想より随分遅かったな


   湊が翔也に近づく 湊が入ってきたゾンビに向かって翔也を押す ゾンビが翔也を掴む


翔也 うわあ!俺を掴むな!

湊   約束通りお前が彼女たちを殺したことは言わない。刑務所にも入れない。俺の恋のために、ここで死んでくれ。奥の部屋は問題がない、と茜さんの前でも言ったが、気が動転している彼女なら窓からゾンビが入ってきたことにも違和感を覚えないだろうな


    隠し持っていたアルコールランプに火をつける 翔也の足元に投げる


湊  ありがとう親友。この恋は叶う気がするよ

翔也 クッソォォ!絶対に殺してやる!生きて俺は…!

湊   今までの俺の判断は間違ってなかったんだろ?ありがとう親友。おかげでこの選択に自信を持てるよ


    茜のいる部屋に場面転換 湊がドアを勢いよく開ける


湊  茜さん無事!?

茜  湊くん…そっちで何かあったの?

湊  窓からゾンビが入ってきたんだ。翔也はゾンビに捕まって…それで自分に火をつけるよう言ったんだ。だから…

茜  そんな…もう残っているのは私たちだけなの?

湊  大丈夫、ゾンビが火に弱い体質ならこの部屋には近づいてこない。それにここは理科室だから火がこっちの部屋に来ることもない

茜  でも…もういや、帰りたい…

湊  大丈夫、必ず、俺が守って見せるから

茜   …うん、ありがとう。湊くんだけでも一緒にいてくれてよかった…

湊   ああ、俺も、茜さんだけでも生きていてくれてよかった

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