月明かりの下で血が爆ぜる

 ガタリ――そんな音を立ててしまった時、わたしは自分の人生が終わるのだと自覚した。


 自覚したといっても、死にたくない。それは当然のことだと思う。でも、怖くて怖くて、身体が動かなかった。なんの抵抗もできずに殺されてしまう。そう考えると更に死にたくないって思うし、それと一緒に余計に身体が動かない。


 パパやママや、他の大人の人達が殺される時の悲鳴が耳にこびりついて離れない。


 青白く光るお月様は助けてくれない、残酷なまでの冷たさがわたしに降り注ぐ。


 そして、お月様に見捨てられたわたしの前に立つのは、恐怖に染められてしまったわたしを凍りつかせるぐらい綺麗な人だった。ううん、人じゃない。とがった耳に、蒼い瞳、そして、二本の牙。白すぎる肌に黒いドレス、ブロンドに煌めく髪にフリルのリボンが似合っている。


 わたしとは、人とは違うのに、それは怖いというより綺麗。人じゃないからこそ、そう感じてしまうのだと思う。わたしを見て笑うその姿、人だったなら怖くて怖くて仕方ないのに、この人なら、怖いという言葉より、綺麗という言葉が先に出る。


 ――でも、わたしの人生が終わるのは変わらない。


 救いが無いのは解ってる。でも、この人になら食べられてもいい。ううん、この人の一部になりたい。それが今のわたしの、助かりたいという言葉の意味。

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