17怖目 『代わって』
「ねぇ、ブランコ、代わってよ」
ブランコを漕いでいると、いつの間にか、一人の男の子が目の前に立っていた。
僕が乗るブランコを、羨ましそうな目で見つめている。
「いいよ」
僕は男の子にブランコを譲ってあげた。
男の子はキャッキャと笑いながら、一人で勢いよくブランコを漕ぎ始めた。
僕は次に、うんていに向かい、ぶら下がって遊び始めた。
「ねぇ、うんてい、代わってよ」
気づくと、さっきの男の子がまた目の前にいた。全く気配に気付かなかった。
「いいよ」
僕はうんていを代わってあげると、今度はジャングルジムへ向かう。
「ねぇ、ジャングルジム、代わってよ」
ジャングルジムに手をかけた瞬間、真後ろから声が聞こえた。
「いいよ」
僕はジャングルジムも代わってあげた。
男の子はジャングルジムをすいすいと登り、あっという間に頂上に到達した。
仕方なくベンチに移動し、持ってきていた携帯ゲーム機を取り出した。
「ねぇ、そのゲーム、代わってよ」
男の子が、いつの間にかベンチの前に立っていた。さっきまでジャングルジムの頂上にいたはずなのに。
「これは、無理だよ」
僕は断ると、急いでベンチから立ち上がり、公園の出口へ向かった。
「ねぇ、代わってよ」
無視して進む。
「ねぇ、代わってよ」
僕は歩く速度を上げる。
「ねぇ、代わってよ」
とうとう走り出した。
公園を抜け、道路を渡ろうとしたその時――
――キキィィィィィィッ!!
トラックのブレーキ音が響き、直前で僕の前に止まった。
危なかった。あと少しで轢かれるところだった。
「ねぇ、生きるの、代わってよ」
背後から、あの男の子の声がした。
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