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滉青と、美雨と、男は、三人でピザを食べることになった。真夜中だ。美雨の部屋にはテーブルも椅子もない。床に車座になり、床に置いたピザの箱から直接ピザを取る。
滉青は、この状況へのなんとも言えない引っ掛かりを覚え、あまりピザも喉を通らなかったのだけれど、美雨と男は、よく食べた。会話はほとんどなかった。滉青が、この後3Pでもするのかな、とぼんやり考えながら、マルゲリータをかじっていると、不意に美雨が口を開いた。
「奥さま、お元気?」
平坦な、感情の色が乗っていない声だった。すると男も、あっさりと答える。
「元気だよ。」
その声には、慈しみみたいなものさえ感じられたけれど、それが美雨に対してのものか、元気だという妻に対してのものかは、滉青には分からなかった。ただ滉青は、この男に妻がいるのだということに、表情にこそ出さなかったが、内心でかなり驚いていた。深夜に売春婦の家でピザを食べているから、という理由よりは、この男がなまめかしすぎるから、という理由の方が、滉青にはしっくりきた。この男の色気は、おんなを惹きつけるよりは、遠ざけそうだ。空気に色を付けるほどの色香に、ついて行けるおんなは、多分そういない。
「そう、よかった。」
美雨が、微かに微笑む。彼女の痩せた頬からは、わずかばかりではあるが、病的な匂いがした。娼婦が被りがちな影を、このおんなもまた、その身に背負っているらしい。
美雨も、男も、滉青にまるで視線をやらなかったし、興味自体示していなかったので、滉青は、自分がここにいる意味が分からず、なんだかとんでもない間抜けになったような気分になった。もともと知り合いで、滉青をこの場に招いた美雨はまだしも、男は滉青のことをなんだと思っているのか、いっそ不自然なほど彼に目を止めない。
さっき、出ていっとけばよかった。
そう思ったのは確かなのだけれど、滉青は、ピザを食べ終わっても、自分がここから出ていかないことが分かっていた。奇妙な具合に好奇心がわいてきているし、更には認めたくないことだけれど、男である滉青はおそらく、美雨の元夫の色気に惹きつけられはじめていた。
3P、するのかな。
今度ははっきりとそう考えながら、滉青は、電子レンジがないせいで冷たいままの、硬いピサの耳をかじっている。
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