親も人間。

煙草廃人

知るべき

親も人間である。こんな簡単なことに気がつくのに18年もかかってしまった。私は弟にそう嘆く。弟の素っ気ない返事がえらく気に触る。弟とかいうやつは私より3年遅く生まれてるわけだから、きっとこのことに気がつくのは3年後だろう。そう心を諌め、弟の部屋を出て階段をかけおりリビングに突撃する。どちらかがいるだろうという目論見は当たり、母親が料理を作っていた。美味そうなきんぴらだね。私は適当に目に付いたものをほめた。人生で私の嫌いなきんぴらを褒めるとは思わなかった。それスーパーのお惣菜。私の善意を素っ気なく返される。私は嫌いなスーパーのお惣菜を褒めるためにここに来たわけじゃない。て、手伝うよ。私はてんでしたくない手伝いを申し出た。うーんそうね。母が考えている間に私は自分が柄にもないことをしていることに築いた。なんだか恥ずかしくなり、辞めようかと悩んでいたら。じゃあお父さんの手伝いしてきて。私の気持ちを無下にする。この人も人間なのだ。

私はもう手伝いをしたいという気持ちなどなかったが頼まれたので仕方が無い。私はベランダに向かう。父は危険人物だ。正直いって父は苦手、母には気を使わないが父には気を使う。母に起こされても起きないが父に起こさると起きる。いつも黙ってて怒ると声が大きい。父は怖いやつだ。ベランダで正座をし丁寧に服を畳んでいる。父よ、手伝いをしに来た。私は父と話す時少し変な言葉遣いで話してしまう。そうか、では自分の服を畳んでくれたまえ。私は乾いた洗濯物の中から自分のものを取りだし少し離れた位置に座り服をたたみ始める。私は女だが洗濯物は畳んだことがない。全て両親に任せている。友人は自分の洗濯物は自分でするという人もいるので、私は友人より遅れているのだろう。ただ私も女の端くれ、ただのズボンならたためる。部屋着のシャツくらいならたためる。簡単だ。ただこの部屋に私のブラとパンツは無い。それは母に全てお願いしている。1分も経たないうちに終わり、私はこの部屋の雰囲気に気がついた。私は魔境に1人で迷い込んだのだ。張り詰めた空気、父は一言も話さない。私は万事休すだった。父は無言で黙々と服を畳んでいる。私はなにか手伝うことがないかと言えずにいた。なにか言おうとした時、父が口を開いた。父さんと母さん離婚するかもしれない。私は何も言わず立ち上がった。なにか言おうとしたが何も思いつかない。母が夕飯ができたと言っている。弟が少し返事をした。私たちは何も言えない。少し間が空いて父が立ち上がった。1人になった部屋で寂しく思う。父も人間なのだ。

うちの家族は余り喋らない。食事の時もテレビが流れているだけで何か話したりはしない。それが居心地が悪い訳では無い。ただ今日は違った。家族全員顔色を伺って、雰囲気のいい話をしようとした。話慣れていない我々は少しの会話で無言になる。その張りつめた空気と静まり返った部屋はキリキリと私をいためつけた。私は昨日の出来事を思い返す。昨日母と父が喧嘩した。私が覚えている中で最大限の喧嘩だった。理由はくだらないことだ。父が母の約束をたがえたのだ。只今までならそんなことでは喧嘩はしない。今はお互いがお互いを嫌いあっている。お互いを傷つけあっている。仲裁に入った私が泣いたことでその喧嘩はお開きになった。私は場違いに親は人間なのだと理解した。

人間として観察してみると。やはり親たちは完璧では無い。ちょっとした事でイラついているし、ちょっとしたことを溜め込んでいる、そしてそれを吐き出している。人間である。なぜそんなことに今まで気づかなかったのか。私がもっと早く気がついていれば、こんな状況にはならなかったのかもしれない。私は両親の中を取り持つことを決めた。

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親も人間。 煙草廃人 @amekutakao

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