青い花が咲く里に潜むのは、優しさに偽装された静かな狂気
- ★★★ Excellent!!!
静かな山奥にひっそりと咲き誇る青い花。その美しさの裏に潜む、得体の知れない因習と人ならぬ真実──。この物語は、どこか懐かしく、けれど決して触れてはいけない“何か”に触れてしまったような、ぞくりとする不気味さがありますね。
主人公・アキくんの語りはどこまでも純粋で無垢なのに、里の人々の優しさがふと見せる陰りが、読み進めるほどに心に引っかかってきます。やがて明かされていく異形の姿や食事会の儀式は、ただ恐ろしいだけではなく、閉ざされた共同体の狂気や哀しみまでも感じさせて……。
そして、外から来た青年・玲央との出会いが、アキくんにとって何を意味するのか──それを知るたびに、切なさが胸を締めつけてくるんです。穏やかに見える村が、じわじわと滲み出すように異常へと変わっていく……そんな、静かで確かな恐怖が、とても印象的な物語でした。