悪仙岳
@onyniio
登山開始・配信者
なしだま ¥2000 「噂に聞く通り、山頂が
赤い霧に覆われている
ような、、、」
「なしだまさんスパチャありがとー
確かに。なんか赤いですね、こわこわー」
スマホでタクシーの外の景色を写す。
やっぱオカルトに自然の荘厳な雰囲気は唆る。
そんなことを思いながら、今日に至るまでの
1週間半を思い出す。
本名、中岸正男。趣味、オカルト、山登り。showtuberで「ハイカーなかぎし」という名で活動している。会社では窓際の、除け者の、冴えないおっさん。私を何も認めない上司を見返してやりたく出してみたオカルトの動画が
大バズり。平凡で特徴のない中年がオカルトスポットを巡り、罵詈雑言のフィードバックをするのがウケたらしい。それからも活火山登山系動画を投稿したり、危険な場所に旅行したり、
「肝が座っているおじさん」というキャラで、1年半で登録者30万人レベルまで到達した。
そして本題。
1週間半前に生配信で、何人かの熱いファンから届いたあるコメントがあった。
「なかぎしさんの趣味、山登り✖️オカルトの
一石二鳥なところ見つけました!
徳島県東部にある山なんですけど、結構アクセスも良くて。近くに温泉街があって、そこ直通の電車があるんです。プラスで、そこからのバス、タクシーで山まで行けるんです。なので温泉街とセットで登山する人も多いんですよー」
詳しく聞くと名前は「悪仙岳」と言うらしい。オカルトとしての知名度は高くないらしく、
行きがいがあったのと、大阪在住の自分に
とって近く、行きやすかったため、次行く場所はそこに決めた。
そんなことを思い出しながら配信していたら、
もう着いた。
「タクシーだと、、、1500円か、高いな」
バスだと配信できないため、しかたない出費だ。運転手に軽い会釈をし、降りる。
タクシーから降りるなり、早速一言。
「着きましたー悪仙岳!」
だが視聴者からツッコミが入った。
「ここはまだ肩里山の麓ですよ!悪仙岳群は
肩里山、悪仙岳から構成されていて、
七合目が悪仙岳頂上になっているんです。
四合目が肩里山の頂上、悪仙岳と肩里山の間
の尾根に山小屋の五合目。六、七合目が
悪仙岳なんです!」
だとすると、2つの山を跨いで合目をつけてい
るからかなり特例だ。
そんな疑問を抱えながらタクシーのターミナルのような場所を出た。すぐ近くに
「道の駅肩里茶屋」があったが無視をした。
人も多く、うまそうな饅頭もあったが、
視聴者が求めてるのはスリラーなオカルトだ。
少し歩き、ウェルカム肩里山のアーチの下に立つ。天気はイマイチ、気温は良好。赤い霧の漂う、悪仙岳頂上まで行った時、どのようなフィードバックをつけることになるだろうか?
人もそれなりにいるため自撮りモードにする。
視聴者からの応援を受けながら、配信の出来栄えに期待し、一歩目を踏み出した。
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