文披31題 2025

　ウサギを追いかけて穴に落ちたら、子供時代にタイムスリップしていた。

　お母さんはハートの女王みたいにぷりぷり怒っていて

　お父さんは芋虫みたいに煙草をふかしていて

　お兄ちゃんはチェシャ猫みたいにふわふわ笑ってて

　妹は帽子屋みたいに気取っていて

　私は帰り道がわからない。

　みんな先に行ってしまった。

　本当はわかってるのよ。

　不思議の国なんてどこにないのよ。

　でもお迎えが来るまでの間、ちょっとだけ待っててもいいじゃない。

　ああ、ウサギがまたやってきた。

　今日も私は、子供時代の穴に落ちていく。

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