1-4 「さくま」はこれはこれで愛おしい
僕は次の日、担任に聞いた。
「先生、例年では、1年生は文化祭でなんの出し物をしてるんですか?」
「例年で多いのは、お化け屋敷とか、クイズ大会とかだな。お化け屋敷は椅子とかでコースを作って、あとは色々幽霊の衣装とかこんにゃく付きの釣り竿とかを自作するんだ。クイズ大会は、文化祭の前にクラスから2.3人選ばせて、クラス対抗で競わせる感じだな。毎年作問やルールデザインに苦労している印象がある」
まあそうだろうと思った。飲食店や劇はスタートラインが結構遠いので難しいだろう。
「飲食店とか劇はどうですか?」
「飲食店は火の扱いが難しい。鉄板、電気ケトルなら貸し出せるが、鉄板も電気ケトルも借りるには許可がいる。数もたしか7,8台ほどしかないから、くじで争奪戦になる。劇はもっと難しい。3年がやりたがるからな。それにダンス部や演劇部、軽音部の出し物も含めると、3日間で使える時間はほとんどないと言っていい」
これでやることは大体はっきりした。
「今日の4限目に総合(総合的な学習の時間)がありますね?そこで15分くらい時間をください。文化祭の出し物について、そこでちょっと方針をみんなに相談します」
「わかった。今年の文化祭実行委員はこれまでにないくらい気合が入ってるな。いいことだ」
君が蒔いた種だぞと言いたくなったが、さすがに自制心が仕事をした。さて、僕が固めた方針を彼女、佐久間言音にメッセージとして送る。
「また詳しくは話すけど、とりあえず飲食店にチャレンジしてみようと思うんだ。難しそうだったら適当なお化け屋敷やクイズ大会に妥協しようと思う。なにか意見があったら教えてくれるとうれしいな」
彼女はいつ見てくれるだろうか、4限目までに見てくれると嬉しい。今はHRが終わったところだ。
すると2限目の途中にスマホのバイブレーションがなった。
「了解。色々決めてもらっちゃってごめん。🙇」
そう申し訳なさそうに送られてきているのを確認できたのは2限目の終わりで、あとはみんなの前で方針を伝えるだけだった。
「飲食店は鉄板や電気ケトルの確保が難しいらしい。なのでとりあえず応募してみるけど、無理だったら案にもあったお化け屋敷、クイズ大会を軸に考えていこうと思う。協力よろしく」
これだけクラスメイト全員に伝え、僕は早足で自分の席まで戻った。任務は完了だ。明日彼女に会えるのが楽しみだ。
一匹狼で無口で表情が乏しくてしっかりもので愛嬌がなくてこの世の大体のことに興味がなさそうな女の子を恋愛関係とは違う形で愛でる話。 テンタクルハウス @Spain_Pick_and_Roll
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