第6話 こんな感じ
風呂から出て――リリノは改めて借金をしていた事情についてセシルに問われ、病気の妹のために必要だったことを説明した。
この点については彼女も理解してくれて、さらには今後も支援してくれるという。
つまり――お金の心配はリリノにはなくなった。
ただし、セシルとパーティを組む必要がある。
リリノはまだ『Eランク』の冒険者であり、いきなり『Sランク』の冒険者であるセシルと組むことが可能なのか――その疑問についても、セシルが答えてくれた。
「パーティにランクの差があれば当然、理由は聞かれるよ。ただ、大きく差があっても汲めないことはない。たとえば、君にサポートを依頼するつもりである、と説明すれば問題ないよ。実際、私としてはそのつもりだからね」
「サ、サポートっていうと……」
「まあ、要するに私に魔力を供給してもらうことかな」
――つまりは口づけ、ということになる。
「ちなみにどれくらいの頻度でしょうか……?」
「んー、どうだろう。毎日ってわけではないけれど、一つの仕事をすれば確実に一回は必要になるかな。基本的には私のコンディションに関わることだから、必要な時にしてもらうことになるよ」
仕事をするごとに、となるとそれなりの頻度にはなるだろう。
けれど――それで今後の生活面も含めて安泰になるのなら、リリノとしてはむしろ嬉しい限りだった。
口づけくらい安いものだ、と考えるべきだろう。
――実際、セシルと口づけをするのも、決して嫌な気持ちになっていない自分がいる。
「じゃあ、さっきの続きをしようか」
「……え!?」
不意にベッドに押し倒されて、リリノは思わず驚きの声を上げた。
「つ、続きって……もう魔力は十分渡したんじゃ……」
「いや、キスだけで十分とは言ったけど、あれだけではまだ足りないんだ。だから、必要な分はもらうことになるね」
「そ、そうなんですね。あ、でも、まだ心の準備が――んっ!?」
――言い終える前に、リリノはセシルからの口づけを受ける。
先ほどの風呂場でのものとはまた違う、今度は魔力を吸い取るための濃厚なもの。
思わず呼吸が苦しくなるほどに深く――リリノはセシルの身体を叩いてアピールする。
だが、そんな手も恋人繋ぎをするように握られて、気付けばだんだんと、気持ちのいいものになっていた。
(……あれ、キスってこんな感じ、だったっけ)
――そもそも、今日が初めての口づけだったのに。
二回目にして、すでにセシルとの口づけが気持ちいいものと理解させられてしまっている。
あるいは――これがサキュバスという種族の力なのか。
やがて抵抗をすることをやめて、リリノはセシルの口づけを受け入れ、魔力を奪われる。
――それからキスが終わったのはしばらく時間が経った後で、リリノはへとへとになってしまっていた。
「改めて、これからよろしく」
「ひゃ、ひゃい……」
呂律も回らないままに――リリノは答えた。
こうして、二人の奇妙な関係は始まるのだった。
身売りすることになったEランク冒険者ですが、何故かSランク冒険者のサキュバスに飼われることになりました 笹塔五郎 @sasacibe
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます