エピローグ 終点で始まる青春物語

 生徒会長は正しく在らなければならない、それは絶対に譲れないもの。


 あの学校に戻る勇気もない、生徒会長として正義を貫き、そして厳しすぎる正義感のせいで……いじめられた。


 それでも正義は私の生きる目的、意志なの。


 だから最後に生徒会にあるノートに記してやった。


 正義は必ず勝つと。


 この列車は間もなく終点に向かう、そこで待っているのがなんなのか、私にはわからない。


 辛いことかもしれない、悲しいこともあるかもしれない、でも今はなんだか胸がドキドキする。


 この感情を知っている、いろんな感情を経験して、学んで、分かち合う。


 あぁそうだ、これはーーー青春だ。


 私の欲しかったもの、私の感じたかったもの。


 それを、青春を探しに行こう、ここから。


「終点から……」


 列車が停止したと同時に、私は列車を出て走り出す、きっとこの先にゴールがあると信じて。


ー終点から始まる青春物語ー

著者 佐々倉由貴


***


 本をカバンにしまう、読んでいたのは昔好きだった小説、こういう結末だったのか。



 登場人物は著者だったらしい、つまり俺が憧れたのは佐々倉由貴という人だった。


 彼女について少し調べてみた、どうやら長野の春華高校に通っていたらしい、そこでの出来事は小説の内容とほぼ一緒だとか。


 いつか出会ったら、彼女が終点から何を経験したのか聞いてみたいな。


「博夢、また講義寝てた」

「寝てない、睡眠学習」

「それ、そんな便利なもんじゃないよ?」


 朱音が昼飯を食べている俺の元に来た、中レベルの大学だけど、一緒に進学できてよかった、おかげで毎日楽しい。


「はぁ、仕方ないな」


 朱音が横に座る、赤い長髪が風に揺れる、相変わらず目を奪われるような髪だ。


「食べ終わったら膝枕してあげるから、午後はちゃんと起きるんだよ?」

「おー、やる気出てきた!」


 こんな感じで見事に上手く扱われてる、幸せだ。


 俺はようやく、辿り着いた、あなたもきっとそうですよね、きっと俺らみたいに幸せな人生を送っている、正義は必ず勝つから。


 そういえば、俺も……同じように電車で思い出せなかった、あの感情……高揚感とか期待とか不安でもない。


 結末まで読んでようやくわかった。


 答えはーーー青春だった。



 


 

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終点で始まる青春物語 青井サアノ @kokokomu

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