不器用な君は。

第1話 いつもの日常

「今日さ、暑いしコンビニでアイスでも買いに行かない?」


下校途中、私の幼馴染、三浦朔也みうらさくやは私、椎名琴葉しいなことはに提案する。


「いいね。いつものあそこでしょ?」

「うん、そう。…じゃんけんして負けた方が奢りってのはどう?」


朔也はいつも通りの、爽やかな真顔で遊び心をくすぐってくる。


「わかってるよね?私、じゃんけん強いんだから〜」


朔也は少し笑って、「負けねえからな」と言い、軽く拳を握る。


「「最初はグー じゃんけん …」」


「「ぽん!」」


「あ」 「やったぁー!私の勝ちぃ〜!」


朔也は、あーあ負けちった、また奢りかぁと肩をすくめながらも悔しがっている顔はしていなかった。いつもなら悔しがるのに。


「だから言ったでしょ?じゃんけん強いって。昔は朔也もじゃんけん強かったのにね。高校生になってから格段に弱くなったね。」


私はちょっと意地悪してやろうと思ったのだが、意外にも朔也は何も言わなかった。


最近の朔也はほんのりおかしい。


少しいじったり意地悪したりすると、前の朔也なら、やめろよ〜とかそれ今日から禁止な!とか言っていたのに今では、無視か苦笑いするだけ。


あの頃のガキンチョはどこに行っちゃったんだろう。まあ、高校生になったんだし、男の子も高校デビューとかもあるもんね。多分そこまで気にすることもないだろう。


一緒にコンビニまで行って、スマホをいじりながら数分待っていると、朔也は店から出てきた。


「おまたせ。買ってきたよ。」


そう言って。朔也は袋からアイスを出した。


「おっ!わかってるねぇ。私がこのチョコミントカップアイス好きなの。」

「まあな。琴葉、昔からそれ一本で行ってるもんな。さすがにな。」


朔也はとても落ち着いた声で当たり前を装うようなことを言ってくる。私が美味しく食べていると、「ん」と手が伸びてきた。


「え?」

「ずっと、飲みたいって言ってた新発売のドリンク偶然見つけたから買ってきた。」


私は朔也の細くて長い手にある新発売ドリンクを受け取った。

私は感動しすぎて何も言えなかった。

何も言えないでいると、朔也は少し笑って言う。


「今日1、目輝いてる。そんなに喜んでもらえるなんて、俺も嬉しいな。」

「もう感謝極まりないよ。ありがとうね。お金いくらだった?新発売だからさすがにお金若干高かったでしょ?」


私はリュックの中にある財布をごそごそと漁っていると、私の腕に朔也の手が静かに伸びてきた。


「お金はいらないよ。ただ俺が琴葉のために買いたかっただけ。堪能してくれればそれでいいよ。」


朔也は私の目をまっすぐ見て言う。私はその目にうっかり吸い込まれそうになった。

私は一瞬で我に返り、「あ、ありがとう」とだけ言った。

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