第14話 時間+写真のチカラ
登場人物:聡美(視点)
(そういえば……タイムライン、っていうのもあったっけ)
ふと聡美は、悟が以前話していた「タイムライン表示」という機能のことを思い出した。
「年月日だけじゃなくて、時間ごとにも写真が並ぶんですよ。だから、その日の流れがひと目でわかるんです」
そのときはピンと来なかったが、今なら試してみたくなった。
いったん、画面を「カレンダー表示」に戻す。
リモコンの「メニュー」ボタンを押し、「表示方法」の中から「カレンダー」を選択する。画面はすぐに、月単位のカレンダーに切り替わった。
テレビ画面の右下には、リモコンのボタン案内が表示されている。
そこに「赤:タイムライン」とあった。
「これね……」
リモコンの赤ボタンを押すと、画面が切り替わった。
横方向に、日付ごとに写真のサムネイルが並ぶ一覧画面が現れた。
その日、その日に撮影された写真が、横一列に日を追って並んでいる。
写真の多い日には小さな画像が表示されていたが、聡美は普段あまり写真を撮らないため、多くの日付は真っ白なままだった。
(やっぱり、そんなに撮ってないな……)
サムネイルが表示されている日付の中から、お祭りに行ったあの日を探し、カーソルを動かしてその日に合わせる。
画面右下を見ると、今度は「緑:時間」と表示されていた。
リモコンの緑ボタンを押す。
表示が切り替わり、今度はその1日の中の時間帯ごとに写真が並びはじめた。
朝の9時、美容院の待合室で娘が椅子に座っている。
10時台には、セットを終えて鏡を覗き込む様子。
お昼頃は、家で一緒にご飯を食べている写真。
そして午後になると、車の中で笑っている娘の顔。
夕方、日が傾き始める頃には、屋台のあかりの中で綿あめを持って笑う姿。
夜、にぎやかな祭りの灯りの中を、ふたり並んで歩く後ろ姿も写っていた。
一枚一枚を見ていくうちに、その日の行動が、順を追って頭の中に浮かび上がってきた。
(……すごい、これ)
ただ写真を見るだけじゃない。時間で並べることで、その日一日の出来事が、まるで再生されるように思い出されていく。
思い出が、ただの点ではなく、流れになって浮かび上がってくる。
あの日の一日が、あの日の気持ちが、そっくりそのままそこにあった。
聡美はリモコンをそっと握りしめたまま、画面に映る小さなサムネイルを見つめ続けていた。
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