第六話 恋愛感情は、赤い色。~求めて。

 ひとつどころに、オレは、ひとと会う為に、何日か、留まっていた。


 ここの警備員に、にらまれながらな……。


 だけど……とはいえ、何人かの警備員とは、話し掛けられて、あいさつは然(さ)る事ながら、軽い談話をするところまでの仲には、なっていたが……。

 そこの警備員以外の、その警備員の中で、オレの事を、よくは思ってない、警備員には、何かと、早くここから出て行くようにと、言われてきたりは、したがな……。


 べつにオレは、今居る、この国…日本、に不法入国しているわけでも、不法滞在、しているわけでも、ないんだが……。


 ま、確かにオレは、マフィアの人員で、ズボンのうしろポケットには銃…バレッタを、仕込ませては、いるけどな……。


 ただ、何日か、このビルが営業して開(あ)いている時に利用して、このビルの中で、このビルの警備員や、このビルに入っている店、その店員、更には、ここに行き交う人間達を、いろいろと観察していて、なんとなく、わかった事があるけど。


 このビルには、”何か”ある……と……。


 と、言っても、その“何か”が、なんなのかは、オレには、まったく検討が、つかないけどな。


 ま、今回、待ち合わせをしている、この間、知り合ったばかりの、あの探偵……世界探偵機構や、国の機関の興信所…興信所、とは、つまり、世間一般で言うところの、探偵事務所、になるんだが……その、どこにも属していない、あの探偵…名を、明一(めいいち)…と、言うんだが……。その明一(めいいち)…になら……その“何か”が、なんなのかが…解るのかも、しれないけどな……。


 だけど、あの探偵……ここ2~3ヶ月、この東京で、何を嗅ぎ回っているんだろう……?


 オレ達、シンガポールのマフィアである“タランチュラ”が、日本の、この東京に、進出してきてから、早、数年。

 日本に来た、最初の目的は、組織の活動範囲を拡げる為だけのものだったが、ここにきて、目的が、変わった。


 その目的は…日本を征服する事。


 もしかして、オレ達のその事で、単身…調査をしていたりして…、と、思ったり、思わなかったり、するけどな……。


 現に、あの探偵……。オレ達が、東京から、あいつがいる北九州まで行ってから、オレ達“タランチュラ”のお頭であられる…お嬢が、左手の甲に彫っている、タランチュラの家紋の刺青(いれずみ)をみせて歩いたら、なんら構える事もなく、関わってきたし……。


 今回、その探偵…明一(めいいち)に接触を試みたのも、表向きは、その事での、さぐりをいれる、という事で、だけどな……。


 だけど、数日前に……明一(めいいち)…に、オレ達“タランチュラ”が、接触をする事になった、本当の理由は…オレ達“タランチュラ”のお頭…お嬢が、あいつに好意をお持ちに、なられたからだ……。


 なんでも、お嬢の話では……明一(めいいち)…が、道行くクモを、助けた…とか、なんとか……。


 今の、このご時世…道の真ん中でだと、いつ車にひかれるかも、わからなくて、危ないだろうに……その身をていして、クモ1匹を助けるなんて、そんな変わったやつ……そんなやつも…いるもんなんだな……。


 オレ達の組織のネームも、“クモ”、って意味、だからよ……。


 だから、お嬢…そいつに、惹かれたのかもな……。あいつ、車にひかれるんじゃなくって、女に惹かれたか。はっはっはっ。


 関心するぜ。


 と、そうこうしている間に、また、ここの警備員が、オレの元へと、やってきた。


 だけど、今回は、いつもとは何か、ようすが違うではないか。


 いつもなら、1人で、やってくるはずの警備員が、今回は、ふたり体制で、やってきやがった……。


 確かに、警備員は、世界のどこの国にも行こうとも、元警察官、も、いたりだったりするのだが……その警備員が、ふたり体制でだなんて……いったい、このオレに、何の用だ……?


 そして…その警備員の1人が、シンガポールのマフィア…“タランチュラ”に、話掛けてきた……。


「お客さん。ちょっと、いいですか…--」



 --同時刻……。--


 明一(めいいち)…は、“タランチュラ”との待ち合わせ場所へと、向かいながら、思った……。


 もう少しで、タランチュラの人員との待ち合わせ場所に、着くな……。


 やっと…やっとだ……。鏡未(かがみ)……。これでやっと、世界への足掛かりが、できそうだぞ……。オレはもう、日本での、住所を持つのをやめたから、住所がもう、ない以上は、パスポートをつくって海外に渡(い)く事も、できないからな……。この日本で、日本国内の組織だけではなくって、世界規模の組織や、世界での組織に、接触できて、関わる事が、できるなんて……よかった……。


 …と……。


 だけど、オレは、もしかしたら……鏡未(かがみ)…の、いなくなった、この世界で……、死に場所を…求めているのかも、しれないな……。


 と、その時、ふと、明一(めいいち)…の、携帯端末に、コーリングがあった。


「あ、タランチュラからだ……。どうしたんだろう……」


 と、“タランチュラ”からの携帯端末へのコールに、明一(めいいち)…が、でようとした、その時、コーリングは、切れてしまった……。


 そして、明一(めいいち)…は、“タランチュラ”へと、電話を、掛け直した。


 プルルルルルル……。


 だけど…


「……。ダメだ……。折り返し、電話を掛け直しても…繋がらない。電話に、でないな……。何か急用が、あったのかも、しれないけど……。待ち合わせ場所へは、あと少しだし……。とにかく、急ごう……」


 “タランチュラ”の人員は、明一(めいいち)…からの、リ、コールには…でる事は、なかった……。


 そして……。


「--やっと、着いたな。タランチュラとの、待ち合わせ場所に……。えーっと……あのひとは……」


 だけど……明一(めいいち)…が、シンガポールのマフィアである“タランチュラ”との待ち合わせ場所である、そのビルのフロアに到着した時……“タランチュラ“の人員の、そのひと”の事を、さがすけれど……“そのひと”の姿は、どこにも、見あたらなかったのだ……。


 明一(めいいち)…は、ここで待ち合わせをしている“タランチュラ”の人員の、コードネームを呼んだ……。


「グッピー?」

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