慟哭(どうこく)。
その日……明一(めいいち)の番い(つがい)である、((番い、とは…結婚して、お互いに片割れの存在になった事))、その明一の妻の鏡未(かがみ)が、亡くなった……。
その時から…明一の周りの空間は暗くなり……そこには、間違いなく空間はあるのに、空間が抜き取られているみたいな、重く、不安な感覚になった。
その感覚は…番いが亡くなった事による……慟哭のはじまりの、感覚だった……。
もう二度と、鏡未と一緒にいる事ができないから……と……次から次に涙が溢れ出てきて…声はなく…泣き叫んだ……。
鏡未が生きている時に…あるひとはオレに、こう言ってきた事がある……。
「番いが亡くなっても、思い出があるから、幸せだ」…と……。
そして…オレは鏡未に、こう言った事がある……。
「オレは、鏡未より先には、死なないから」…と……。
オレが鏡未に、そう言ったのは…それは…オレが、鏡未より先に死んでしまった場合……その後の、鏡未の余生を…一生、鏡未にさみしい思いをさせてしまう事になるだろうから…だと思ったから……。
だから鏡未には、そういう思いをしてほしくなかったから……オレは鏡未に、そう……言ったのだった……。
確かにオレも…たとえ、オレより先に、鏡未が亡くなったとしても……それでもオレは、いつも通りに生活ができるものだと、思っていたから……。
だけど実際は……鏡未が亡くなって、慟哭がはじまった、あの時から……オレは……更に、慟哭の中にいる……。
たとえ、鏡未が、オレの傍からいなくなってしまった事で…その事によって…生きる気力がなくなってしまって……これから、どう生きていったらいいのか、わからなくなってしまって……それでも生きていかなければいけないわけで……。
基本、オレの生活スタイルは…探偵業、…という職業柄……サラリーマンなどの、他の職業では、できないような、自分の好きな生活スタイルで、生活をしていく事ができるわけだから……だから、鏡未がオレの傍にいないさみしさを、まぎらわす為に……鏡未がいなくなった感覚を、意識しなくていいようにと……常にヘッドフォンをしていて、一日中、スマートホンの中にある、鏡未に関係のある曲を聴いていて、鏡未の事に意識を向けていたとしても、べつに、誰からも文句を言われる事はないのだ……。
だけど……スマートホン…略して、スマホ…や、充電式のモバイルバッテリーの充電がなくなった時に……その都度、タリーズコーヒーや、女神ヴィーナスである、女神のヴィーナスやアルテミスの守護によって守られている、タリーズコーヒーの姉妹店のスターバックス、ミスタードーナツに、ケンタッキーフライドチキンやマクドナルドなどといったお店の中で、端末を充電などをさせてもらう事ができる店舗で、スマホやモバイルバッテリー、パソコンなどを充電させてもらっている時に……そういう…端末などを充電している時に、少しの間でも、曲を聴く事ができない時には、その鏡未が亡くなってしまった感覚を、否が応でも意識してしまう……鏡未が亡くなった、あの時だけの……鏡未が亡くなった感覚による慟哭が、あの時だけでおわるのではなかった…と…思った……。
鏡未がオレの傍にいないという事がさみしくて…情緒不安定で、泣きたくもないのに、ふとした時に…勝手に涙がでてくる……。
鏡未が、一生オレの傍にいない…という、その空間の感覚が……慟哭の中の、更なる慟哭が、一生つづいていって……一生慟哭の中に……いるのだろう……。
確かにオレ自身、鏡未との思い出がある事で、今現在、救われている、という事は、事実だ……。
鏡未との思い出が、あるという事は…その思い出とは、その慟哭を意識しなくていいようにと、自分の意識を、その感覚から、まぎらわす為に、あるのだろう……と……。
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