第24話『王都の陰謀』

王都付近で“超越反応”が観測された。

……やはり、王都は何かを企んでいる。


 この連絡用水晶も、実は僕が王都の兵士から――まあ、ちょっとスったものだ。

最近、オーディンに言われたっけ。

「お前、魔法使いのくせになんで剣持ってんだよ!」って。


 ……今思えば、確かに僕は“魔法使い”だった。


 そんな細かいことはさておき――王都付近の“超越反応”について、ひとつだけ心当たりがある。

――大魔導士ルーザ


 あのとき彼女は、僕の《エクシード・フィネス》に強い関心を示していた。

だからこそ、今このタイミングでの“反応”の発生源として、他に考えられない。


 ……だが、それにしても――


なぜ、王都の人間が“僕の”超越魔法を知っている?


「どうした? ファルカ?」


「考え事ですか?」


「ああ」


 やはり、王都は何かを隠している。

その“企み”を暴くには、やつらが《超越魔法》をいつ、どこで知ったのか――そこを突き止める必要がある。


 ……場合によっては、オーディンやアリスを巻き込むことになるかもしれない。


「そういえばさ、お前……なんで王都の通信水晶を持ってたんだ?」


「……あれって、本来は王都の関係者しか持ってないはずでしょ?」


 皆が、疑いの色を浮かべた視線を僕に向けてくる。

無理もない。最近、ベルツェ王国の情勢は不安定だ。

噂では、“王”が突然消息を絶ったらしい。


「……これは、王都の兵士から盗……借りた物だ」


「盗んだのね……」


「さっすが! ファルカだ!」


 僕の名前がギルドに知れ渡ったのは、黒龍討伐の後。

なんせ、あの勇者パーティですら手も足も出なかった化け物に、僕が勝ったんだ。

それなら、王都が僕を警戒するのも当然だ。


 そして、僕は皆に宣言する。


「先にお前たちに伝えておくことがある」


「えぇ!? まさか告白!?」


「僕は王都の謎を突き止める」


 なぜ、王都が僕の《超越魔法》を知っているのか。

なぜ、王都付近で“超越反応”が起きているのか。

なぜ、国王が消息を絶ったのか。


 これらの疑問は、全てが繋がっている気がする。


「どういうことだ?」


「“王都の謎”って、何なんです?」


 実は、多少の心当たりがある。


 まず、王都が超越魔法を知っているのは、ルーザと繋がっているからだ。

だが、それだけでは説明できない。

――なぜ、わざわざ王都“付近”で超越反応を起こしたのか?


 そして、王の失踪。

これは、以前から僕が警戒していた“悪の残留”と関係している。

黒龍の残骸から放出された、正体不明のエネルギー。


 ――あれは、ただの魔素ではなかった。


「王都は……」


 僕は静かに言った。


「王都が、超越魔法と黒龍のエネルギーを同時に狙っている可能性がある」


「それって……!」


 僕が昔、図書館で読んだ本に、こんな一節があった。


《勇者が討伐した魔王。その亡骸から、禍々しいエネルギーが溢れ出した。

その場にいた祖龍“ルーツァ”がそれを取り込んだ瞬間、金色に輝いていた身体は、黒く鈍く光る鱗へと変貌した》


 これは有名な詩人の作品で、ほとんどの人がただの寓話だと考えている。

僕自身、そう思っていた。

だが――今は違う。


 あの黒龍から漏れ出たエネルギーを見た今なら、信じられる。


 つまり――


「王都は、“魔王の復活”を計画している」


 言葉にした瞬間、空気が凍った。

 誰もが、口をつぐむ。


 かつて世界を破滅へと導いた存在が、再び地上に現れようとしている――


「嘘……」


「いっいや! そんなわけないだろ!」


「ベルツェは“大王国”なんだぞ!」


 それでも、他に説明がつかない。

なぜ王都が《超越魔法》を狙うのか?

なぜ、あの忌まわしいエネルギーに関わろうとするのか?

そして――なぜ、ルーザが王都に戻ったのか。


 全ては、ひとつの答えに繋がっている。

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