第7話!ライバル襲来!氷の男、炎の男②
シンジ・カッターミーは修道院近くのスーパーへ、米佐といっしょに買いに行った。
米佐「なんでついてくんだよ鬱陶しい!」
シンジ「ワシとて嫌じゃ!和尚が逐一監視して様子を見てこいというから、お前を追ってるんじゃ!」
米佐「クソっ、あの糞坊主。次あったら海に沈めてやるか」
シンジ「雲黒斎和尚は死んでも死なんぞ、多分」
米佐「トラックで轢いても死なないのはもう超人の域だよな」
* *
〜スーパーの食材売り場にて
米佐「お前、今それ取ろうとしたな?」
シンジ「先に手が伸びてたのはワシじゃ。引っ込め!」
同時に手を伸ばし、白菜をつかみ合う二人。
店員「すみません、それラスト一玉なんで……」
米佐とシンジ、視線で火花を散らす。
米佐「……勝負だ」
シンジ「望むところよ。テーマは“冬の鍋”じゃ!」
米佐「いまは夏じゃバカイタコ!」
---
試食婆「ほれ、若い衆。このこんにゃく食べてみんしゃい。恋が芽生える味じゃぞ……うふふ」
米佐「食べんぞ、俺はそんな怪しいもんは」
シンジ「ワシは食う」
米佐「食うんかい!」
試食婆、消える
米佐「!?今の、何者だったんだ…?」
シンジ「陰陽道に通じた者かもしれん」
---
米佐:目利きとスピード重視。まるで市場のプロ。
シンジ:レシピ帳片手に几帳面に買い物、効率重視。
店員A「……なあ、あの二人、めっちゃ買い物に気合い入ってへんか?」
店員B「絶対料理バトルやろなぁあれ。おーい!京野菜、買うてってやー!」
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買い物を終え、2人は修道院に戻る。
米佐「いまは6月、スイカはまだ高かったな⋯」
シンジ「懐かしいのお、禅寺で唯一食えるフルーツじゃ言うて、貴様はみんなの分まで取りおった」
米佐「禅寺の食事はお粗末すぎんだよ、管理栄養士に叱られろ」
シンジ「肥え太る僧侶が何処にいる?断食も修行のうちじゃ」
シンジ「しかし、料理人ぶっても、ただの腹ペコ坊主じゃったな。ワシらは──」
シンジは空を見上げ、うなだれる。
米佐「……シンジ……」
懐かしき青春。今は戻らぬ、修行時代───。
(音楽:♪少年時代)
「僧侶長がムカつくから、肥溜めに落としてやった新人時代」
「シンジが生意気だから、料理にゴキブリ入れてやった事もあった」
「米佐があまりにもイビキをかかんから、ホントに死んだと思って、夜中、墓を掘ってしまった」
「シンジが何度もイタコ芸で人を刺そうとするから、しまいにはレクター博士みたいに拘束した事もあったっけな……」
「米佐が坐禅中に寝ているのを起こそうとしたら、僧侶長に槍で突かれたのォ……」
米佐&シンジ「ろくな思い出がねぇ……」
* *
修道院が見えてくる
米佐「──あーもういい、昔話はこれまでだ。
次、俺の“神技”見せてやる。今夜の晩メシ、すげえぞ?」
シンジ「……期待せん方が、心が傷まんで済むからのう」
米佐「はぁ!?お前それ言いたいだけやろ!!」
シンジ「図星じゃ」
* *
翌日、米佐とシンジの料理対決が始まった。
院長「では、今宵この聖堂にて──
神に誓って正しき料理人を決める、料理デュエルを開催いたします!」
米佐「俺は俺の料理で、お前に勝つ!」
シンジ「料理とは己との対話……勝利はオマケに過ぎん……」
シスター「戦う料理人(キッチンファイター)たちよ。“魂を癒やす一皿”
──その言葉の意味を、テメェらなりに解釈してみせな」
シンジ「なんだっそら!?」
米佐「また変なテーマか……」
* *
米佐が出した料理は、以下のものだった。
「ポルトガル風・贖罪のカタプラーナ(魚介のトマト蒸し)」
フライパンの音が、修道士たちの鼓動とシンクロする。
米佐「これは、異国で学んだ“祈りの料理”だ……」
魚介・オリーブ・トマト・ローズマリーなどをカタプラーナ鍋に閉じ込め、じっくりと蒸し焼きにして香りを引き出す。
米佐「信仰の力は、食卓にも宿る。異なる文化の中でも、人は“温かいもの”に救われてきたんだ」
* *
対するシンジが出した料理は、以下のものだった。
「氷点懐石・無我の三品」
水音とともに、美しく切り揃えられる野菜。出汁は昆布と椎茸だけで極限まで旨味を抽出。
精進料理をベースに、冷やし炊き合わせ、白湯椀の冷製、氷室仕立ての胡麻豆腐など。
氷のように静かで、奥深く、研ぎ澄まされた一皿。
シンジ「真に温かいものとは、口にした瞬間、魂の奥が静かに震えるもの……」
* *
試食タイム。
修道士A「米佐さんのカタプラーナ、心の底から体がえろうポカポカするような……」
修道士B「でもシンジさんの胡麻豆腐、なんか……涙出そうになったわぁ……」
一流のソムリエであるシスター・ダマレーヤも、流石に舌を唸らせていた。
シスター「米佐……お前の料理は、まるで教会のストーブのように優しい。
だがシンジの料理は……仏へ祈るときの“静けさ”を彷彿とさせるな。
これは、拮抗しているな」
* *
軍配は……
なんと、シンジに上がった。
米佐「!?」
シスター「……驚いた。ここまでの和食のプロがいるとはな。これは伊達や酔狂では務まらん。真に“和”を知る者の技だった、と言わせてもらおう」
シンジ「ワシは“兵糧道”を受け継ぐ為に血反吐はいて来たんじゃ!和食においては米佐なんぞに負けるか!」
米佐「……ぐっ!」
拳を握りしめ、唇を噛む米佐。
修道士たち「米佐さんが負けた……だと!?」
米佐(チクショウ……和食だけでここまで差が出るなんて……
俺にはまだ、埋まらない穴がある……)
(和食だけじゃない、もっと広い視野を持って、
“料理で世界を救う”──その夢のためにも、
俺はここで止まれねえ!)
* *
シンジ「約束通りじゃ。米佐は連れて帰る」
シスター「待ちな」
シンジ「なんじゃ?女」
刹那、シンジの顔に向けて、シスターは弾丸を3発発射した。
シンジ「殺す気か!?」
シスター「威嚇射撃だ。つぎ私を“女”なんて呼んだら、心臓に撃つ」
シンジ「なんじゃこのアマ⋯」
シスターは心臓に弾丸を放った。
だがそれは、コルク弾だった。
シンジ「がぼぉ!!」
シスター「私の前では誰も舐めた口は聞かせない」
修道士A「こっわwww」
シスター「そこのシェフ、連れてってもいいが、私も寺へ案内しろ」
米佐「あれ?正式採用だった筈じゃ!?」
シスター「気が変わった。そこのシンジの方が、シェフに相応しいかもしれん」
シンジ「……良いじゃろう。寺へ案内(あない)しよう」
シンジは撃たれた箇所を押さえながら、苦悶の表情を浮かべる。
院長「私も同行します。和尚様へ、ご挨拶に伺いましょう」
修道士A「私、ザビエル藤原も」
B「このヴァリニャーノ海原も同行しよう」
C「チェスト関ヶ原もお忘れなく!」
D「ヒッキヤ三好も行きますぜ」
E「北条マセンシアも行きます」
シスター「修道院(花京院のパロディ)」
米佐「お前らそんな名前だったのかよ……クセ強いな」
こうして、謎に満ちた禅寺“反骨寺”を目指し、
シスターと米佐、クセの強い修道士たちによる、巡礼(?)の旅が始まった──!
シスター「行くぞ」
バァァァーーーーン!
To be continued...
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