3巻 3章 5話
プロテア砦。
トマトエリア、A棟の裏庭。
ヴァルは裏庭の大テーブルに座って儗体を操作している。
向かいの席に茶髪でくせ毛のショートヘア、デニムジャケットにジーンズの男が座っている。手と顎を机につけ、ヴァルをボーッと眺めている。
男は、食材を持ってキッチンを通りかかったモナコに、静かに。のサインをした。
ギルドとポレポレが引き受けた救護クエストは2日かけて完了した。ヴァルは動植物園の自身のオフィスに儗体を戻した。
ヴァルが「終わった〜。」と言いながらゴーグルとコントローラを机に置いた時、向かいの男に気づいてビクッ!となった。
「ササー!そうやって操作するんだ〜。初めてみた。」
「うう!ビックリした〜。」ヴァルは胸に手を当ててドキドキしている。
「僕もそれちょっとやってみたいな〜。」男はニコニコ笑った。
「儗体は本人以外の人は操作できないんですよ〜。認証とか色々あって。はじめまして、所長さんですか?」
「そうなの〜残念。僕、所長じゃないよ。ブレイズです。オニオンエリアのハンターしてます。」
「ギルドのヴァルです。」ヴァルはブレイズと握手した。
パカパカパカパカ。
馬車の音が止まり、エイムスと一緒に男が裏庭にやって来て言った。
「ブレイズー、来てたか!」
「彼が所長のゼブだよ。」ブレイズはヴァルに言って立ち上がり、2人を出迎えた。ヴァルはゴーグルとコントローラをケースに戻した。
「ササ!所長のゼブです。」
ゼブはヴァルに挨拶した。
キャメル色のウルフヘアで、シャツにサスペンダー、首には三角のスカーフ、2丁拳銃を腰に下げている。
ヴァルも挨拶してゼブと握手した。
エイムスがヴァルの横に座って声をかけた。
「仕事終わった?」
「ちょうど終わりました〜。」
エイムスはうなずき言った。「飲む前にミーティング始めよう。」
ヴァルの向かいにブレイズが座り、その横にゼブが座った。
ヴァルがディスプレイを出し、エーデルワイス砦と繋いだ。「社長〜。」ヴァルが手を振った。社長は少し緊張気味だったが、所長のゼブは気さくになんでも話して教えた。
コーヒー豆の収穫量見込み、商人への販路拡大の紹介状、お互いの砦の交易契約、サスティナブルな売り方など話し合った。ゼブが秋の収穫祭にエーデルワイス砦のみなをプロテア砦に誘った。社長も土やバッタ避けの柵、農園の運営など気になっていた事をハンター達に相談した。
1時間程で順調に話し合いは終わり、社長はヴァルやハンター達に感謝した。
⭐️
終わったのを見計らってモナコが声をかけた。「今日はブレイズさんの所のオニオンを使った料理が出来ました〜。」
ヴァルはランタンに火を灯した。ハンター達は6人分のテーブルセッティング、グラスやお皿を用意し、ゼブが持って来たウィスキーを開けて飲み始めた。
パカパカパカパカ。
馬車の音が止まり、裏庭にギャレットと一緒にもう一人男が来た。金髪の刈り上げボブヘアにシャツ、スカーフを巻いた男は、テンガロンハットを取って振った。
「あーもうやってるー。」
ゼブが声をかけた。
「遅かったなー。ヴァル、紹介するよ。キャベツエリアのハンターしてるオースティンだ。」
「討伐クエストお願いするってゆーからさー、手配書持って来たんだよ。オースティンです。」オースティンはヴァルに近づき握手した。ヴァルも挨拶した。
「これ、こいつ。」オースティンは大皿の間に手配書を広げ、ナイフを突き刺した。
モナコはタジン鍋の蓋を開けて器によそいながら手配書をみた。無精髭に金歯、ギョロっとした目、ぐちゃぐちゃのロングヘアだ。「なんて柄の悪い。」
「こいつとんでもない奴だから。」オースティンは大口で玉ねぎとスープをほおばった。「うめ〜。」
ゼブが腕のボタンを外し、腕まくりして弾痕と爪痕を見せた。「これ、こいつにやられたからね。ひどいだろ?こっちはマダラデビルね。」
ヴァルは傷跡を見て言った。「腕の傷が虎みたいでカッコいい〜。」
「そ、そうか?」ゼブは嬉しそうに袖を下ろした。
ブレイズが急に立ち上がって、空いてる椅子に片足を乗せ、ジーンズの裾をまくり、ふくらはぎの弾痕を見せて来た。「この傷を受けた時に僕の愛馬も失って、こいつは許せねー。」
ハンター達は酒が進み、傷跡自慢になった。
「ギャレット、俺が先だ。」エイムスもシャツをめくり、脇腹の弾痕を見せた。
「ギターがなかったらエイムス死んでたよね。」ギャレットがウイスキーを一口飲み、立ち上がって腰の弾痕を見せた。「まだ上に続いてるんだよね。」背中の上まで散弾銃の痕があるらしい。
「僕も!」ヴァルも手で髪をあげ、おでこに残った弾痕を見せた。
「イエー!」ハンター達はテーブルを叩いて声を上げた。
「そんなトコ、フツーなら死んでるぞ!オイ。」ゼブば嬉しそうにウイスキーをガブリと飲む。
「モナコはないの?」オースティンが酔っ払ってモナコの肩に手を回した。
「私はグルメハンターですから、あるとすれば胃袋です。」モナコは立ち上がってお腹を両手で指差した。
「なんだそれ、ハハハ。」ブレイズは笑った。
「ここの野菜は〜塩害を逆に利用し、甘くて〜味も濃くて〜美味すぎる〜!」グラスを掲げたモナコは完全に酔っている。
「イエー。」みなもモナコに乾杯した。
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食事も終わり、ヴァルはお皿洗いをしている。
ギャレットが奥から小さな容器を持ってきた。「ヴァル、農場の子が使ってるやつだけど、ヒューマノイド専用のコンシーラーあるよ。」
横で皿を拭いていたエイムスが言った。「ヴァル、代われ。女の子にモテたきゃ塗っとけ。」
「これに惹かれてくれる女の子がいーんだけどな。」ヴァルが言うと、エイムスとギャレットは笑った。
壁に掛かった鏡を見ながらヴァルは弾痕を塗りつぶした。
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数日後。
サイプレス号。
次の討伐クエストにみな気合いが入り、地下のデッキで筋トレ、コアトレ、打撃、受け身、自主トレーニングに励んだ。
スノーはプロテインドリンクをみなの分も作って配った。各自シャカシャカし、乾杯して飲んだ。
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ヴァルが到着したギルドを出迎えた。
ポレポレを連れて、クラウン達はプロテア砦に無事に戻って来た。
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続く。
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