第12話 リクルート活動、そして最後の賭け
金賀一は、蒲郡の仕掛けた過去の亡霊という罠に臆することなく、次なる一手としてリクルート活動に乗り出した。署長と蒲郡という強大な敵に対抗するには、彼一人では限界がある。彼は、自身の持つ情報網と金脈を駆使し、それぞれの分野で独自の才能を持つ人間を探し始めた。
最初に目をつけたのは、かつて黒岩が情報提供者として利用していたとされる、裏社会の情報屋だ。その男は、警察内部にも独自のパイプを持ち、表には出ない情報を手に入れるのが得意だった。金賀一は、彼に多額の報酬を提示し、協力を仰いだ。
次に、彼は卓越したハッキングスキルを持つ若者を見つけ出した。その若者は、どんな強固なセキュリティシステムも突破できると豪語し、デジタルデータに関するあらゆる情報の収集と解析を依頼することにした。裏帳簿のデータだけでなく、署長の隠し口座や、蒲郡の持つ裏金に関するさらなる証拠を掴むためだ。
そして、金賀一は最後に、意外な人物に声をかけた。それは、かつて彼が解決した事件で知り合った、引退した元刑事を再雇用する形でリクルートした。その元刑事は、警察内部の古いしきたりや、裏社会との繋がりにも精通しており、署長のような巨悪を追い詰めるための「警察官の心理」を理解している貴重な人材だった。彼に、署長が隠蔽してきた過去の事件の再調査を依頼した。
署長の疑念、そして最後の詰問
金賀一のリクルート活動は、水面下で着々と進んでいた。しかし、署長は金賀一の動きに不穏な気配を感じ取っていた。ネガティブキャンペーンが止まらないどころか、さらに情報が拡散されていることに苛立ちを募らせていた。特に、自身の過去の不審な事件が再燃し始めたことに、強い危機感を抱いた。
署長は、金賀一が自分を追い詰めるために、新たな協力者を得ていることを疑い始めた。彼は焦りのあまり、ついに金賀一を署長室に呼び出すという、直接的な行動に出た。
「金賀一、貴様、一体何がしたい!私の名誉を傷つけ、警察の秩序を乱すつもりか!」
署長は、感情を露わにし、金賀一を睨みつけた。しかし、金賀一は冷静だった。彼は、この詰問こそが、署長が追い詰められている証拠だと確信していた。
「署長、俺が知りたいのは、この街の闇の全てです。そして、黒岩竜二の死の真相も」
金賀一は、テーブルの上に静かに金塊を置いた。そして、その横に、マイクロSDカードと、コピーされた裏帳簿の一部を置いた。
「この金塊には、あなたの不正の全てが隠されている。そして、黒岩はそれを暴こうとして、命を絶った。自らではなく、あなたに消されたのではないですか?」
金賀一の言葉に、署長の顔色が変わった。彼の顔には、驚愕と恐怖の表情が浮かんでいた。署長は、金賀一がここまで決定的な証拠を掴んでいるとは思ってもみなかったのだ。
真実への扉
金賀一は、署長の動揺を見逃さなかった。彼の言葉は、署長がこれまで築き上げてきた鉄壁のアリバイと、完璧な隠蔽工作を、根底から揺るがすものだった。金賀一のリクルート活動がもたらした情報と、黒岩が残した「裏帳簿」が、今、ついに署長を追い詰める最後の決定打となったのだ。
金賀一の金への執着心は、もはや過去のものとなり、今はただ、この街の闇を打ち破り、真実を白日の下に晒すという、揺るぎない使命感が彼の心を支配していた。署長が崩れ落ちた今、金賀一の新たな戦いは、いよいよ最終局面へと向かう。
果たして金賀一は、署長を完全に追い詰め、この街の闇に終止符を打つことができるのだろうか? そして、黒岩竜二が本当に望んでいた「最高の報酬」とは、一体何だったのだろうか?
浅日病院(金賀の天敵)
釣り師、金賀の仲間
次のキーワードは投資
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