永遠の時をあなたと/第6巻(家族編)
SHINTY
ディアとティムの章
新年のお仕事
【第5巻の外伝でシヴァ夫妻がやってたやつ】
2042年元旦。
新年を迎えたナイト家はいつになく静かであった。
「すっごい静かね。神々がいないとこんなに静かだったんだ。」
朝食の席でソフィアがつぶやく。
そこには両親を始め、シヴァ夫妻とガネーシャ夫妻の姿もない。
「師匠達が旅行してた時と同じだろ?」
「だって帰って来てからずっと賑やかだったじゃない。パパ達がいなくても誰かしら降臨してたし。神々が一人もいないのって初めてでしょ?」
「そうね~。でも静かなのは一週間ほどでしょう?神々の一番忙しい時期だって言うし……。」
「シルビア達は今年が初めての任務だろう?シャスタ君はともかくシルビアは……ちゃんとやれているのか心配だよ。」
ロナルドのつぶやきに、頷いて同意するハウエル・ファミリー。
ソフィアとマルクも頷いていた。
その神々はというと──。
「何で俺一人が子守りなんだよ。シャスタも手伝え。」
「私も忙しいんですよ。破壊神と違ってね。」
ニッと笑ってシャスタが言った。
「暇で悪かったな!つーか、こっちが放棄してんだよ!ったく、遠慮がなくなったら言うようになったじゃねぇか。」
「あはは、シヴァだから言えるんです。他の神々にはまだ言えませんよ。」
「あれ?シャスタも休憩中?」
下界へ瞬間移動する為の中継地点。
その天界で子守をしているシヴァのもとに神妃達が戻って来た。
「アレックスの様子を見に来たんです。シヴァにひいきされていそうでね。」
「しねぇよ。三人まとめて兄妹みてぇなもんだろ?俺の息子も同然だ。」
笑うシヴァに同意して頷く三人。
分身の子供は我が子同然だった。
「あ、もう行かないと。えーと、イギリスは……と。」
次の目的地イギリスへと降りて行くシャスタ。
「知識の神も忙しいわね。シルビア、もう慣れた?」
「ん。ありがと、パールヴァティー。邪魔してごめんね。」
初めての任務で勝手が分からず、同じ愛を司るパールヴァティーに同行し、仕事を見せてもらっていたのだ。
「アゴス、疲れてない?空中浮遊って初めてでしょ?」
〈平気ですよ。普通に歩くのと同じ感覚ですから。〉
「そう?じゃあ、私の任務地に行こうか。まずは1年ぶりの日本から。」
「あら、もう日本に行くの?あの国は忙しいわよ~。」
「ほんと?あ、京都だけでもたくさんあったもんね、お寺とか神社。もしかして日本があるから任務地が少ないの?パールヴァティーに比べたら凄く少ないわよね?」
「それもあるけど、初任務だから少なめにしたのよ。」
「そっか……。ん~、先に他の国やっちゃおうかな。えっと、オーストラリア行こっ。」
幸せそうな笑顔を見せるシルビア。
シヴァに理由を問われ、新婚旅行の地だと教える。
「あー、何か分かったぞ、お前の任務地。シャスタと行った事のある国なんじゃねぇか?」
「え……?あっ、ほんとだ!わ、そうだったんだ!」
「そうよ~。愛を司る女神だもの、シャスタとのラブラブな思い出のある国が良いと思って決めたのよ。」
「やん、張り切ってやっちゃう!行こっ、アゴス!」
嬉しそうに下界に降りて行くシルビア。
笑って見送ったパールヴァティーも次の任務地へと降りて行った。
「やっぱ暇だ……。仕事した方が良かったか……?」
残されたシヴァが子供達相手につぶやいていた。
それから数日をかけて他の国々を廻り、残すは日本だけとなった。
「まずは北からやっちゃおうか。行くわよ、アゴス!」
〈了解!〉
そう言って日本最北端の神社へ向かう。
神通力で姿を消し、空中浮遊するアゴスに乗った女神シルビアが人々を眺める。
縁結びの御守りには念を注入済みだ。
お参りする人々の祈りが聞こえ、恩恵を施す。
全ての祈りは聞こえないが、本気で恋愛を望む人の声は聞こえるのだ。
「シルビア!もしかしてここで終わりですか!?」
慌てた様子のシャスタがフィリアと共に現れた。
「ううん、最初の神社よ。どうしたの?」
「良かった!日本は一緒に廻ろうと思っていたんです。」
「シャスタも日本を割り当てられてたんだ。ん……?」
何やら視線を感じる。
下を見ると見上げている人がたくさんいた。
黒豹だとかシヴァ神だとか聞こえてくる。
「やだ!神通力使ってないの!?早く使ってよ!」
「わっ、すみません!忘れてました!」
慌てて神通力を使うシャスタ。
シルビアは神器を取り出し人々の記憶を消した。
「まったく……。他の国ではちゃんと使ってた?」
「だ、大丈夫ですよ。今のはシルビアに会って忘れただけですから。」
言いながら、学業成就の御守りに念を入れる。
数人に恩恵を施し、次の神社へ移動した。
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